研究課題/領域番号 |
15H04607
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
加野 浩一郎 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80271039)
|
研究分担者 |
森友 忠昭 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20239677)
伊藤 大介 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (40508694)
北川 勝人 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50409067)
沖 嘉尚 日本大学, 生物資源科学部, 助手 (70525667)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | DFAT細胞 / 脱分化脂肪細胞 / 人工多能性細胞 / 再生医学 / 細胞移植治療 |
研究実績の概要 |
再生医療用のドナー細胞としてDFAT細胞を臨床応用するには、成熟脂肪細胞から均質な増殖および多分化能をもつDFAT細胞が安定的に取得されなければならない。平成27年度では、種々の犬種(品種)および年齢の個体から採取した成熟脂肪細胞からDFAT細胞を作製し、それぞれのDFAT細胞の特性(増殖および多能性)を明らかにすることを目的とて研究を行った。動物病院で外科手術の際に廃棄される皮下脂肪組織(1~2g)を細切したのち、コラゲナーゼ処理した。処理後、フィルトレーションして未消化組織を除去したのち、低速で遠心分離して成熟脂肪細胞の画分を採取した。培養面積12.5cm2のフラスコに5万個の成熟脂肪細胞を播種し、20%FBS添加DMEMで14日間培養した。培養後、成熟脂肪細胞から非対称分裂により生じるDFAT細胞の細胞数を調べた。その結果、培養7および14日後ではそれぞれ3~4×10∧5個/12.5cmおよび1.2~1.6×10∧6個/12.5cm2のDFAT細胞が採取された。ついで、作製したDFAT細胞の増殖能および多分化能について検討した。継代2~5代目までのDFAT細胞を10∧3個/cm2で播種し、培養7日後における細胞数を調べた。その結果、3.5~5×10∧4個/cm2のDFAT細胞が採取された。継代2~5代目のDFAT細胞の脂肪細胞および神経系細胞への分化能力を調べた結果、脂肪細胞および神経細胞特異的遺伝子およびタンパク質の発現が観察された。また、DFAT細胞の作製効率、増殖および多分化能は、犬種および年齢の影響はいずれにおいても認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の犬種(品種)および年齢の個体の皮下脂肪組織から単離した成熟脂肪細胞は、いずれにおいても安定的かつ効率的にDFAT細胞を取得できることを明らかにした。取得したDFAT細胞は高い増殖能力と多分化能をもつこと、またそれらは犬種および年齢の影響が認められなかったことを明らかにした。以上の結果から、イヌDFAT細胞が再生医療用のドナー細胞として有用であることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
イヌDFAT細胞は、犬種および年齢にかかわりなく、安定的かつ効率的に採取されること、また高い増殖能および多分化能をもつことが示された。今後は、DFAT細胞が機能的な神経系細胞へ分化するかを調べるとともに、スキッドあるいはヌードマウスを用いて脊髄損傷モデルを作製し、イヌDFAT細胞およびそれ由来の神経幹細胞、前駆細胞および神経細胞を移植し、移植後における細胞動態と運動能力の回復に及ぼす影響の詳細を検討する。以上の実験で良好な結果が得られれば、脊髄損傷したイヌの治療を試みる予定である。
|