研究課題/領域番号 |
15H04607
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
加野 浩一郎 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80271039)
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研究分担者 |
沖 嘉尚 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (70525667)
森友 忠昭 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20239677)
伊藤 大介 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (40508694)
北川 勝人 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50409067)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脱分分化脂肪細胞 / 神経細胞分化誘導 / セロトニン作動性神経細胞 / グルタミン酸作動性神経細胞 |
研究実績の概要 |
マウスDFAT細胞から機能的な神経細胞を分化誘導する培養系の確立 昨年度において、イヌDFAT細胞を神経分化誘導すると、神経特異的遺伝子群およびタンパク質の発現は認められたが、神経伝達物質に反応する神経細胞は得られなかった。本年では、イヌおよびネコDFAT細胞から機能的な神経細胞を取得する分化誘導培養系を確立するための予備検討として、遺伝子情報や神経細胞特異的タンパク質に対する抗体が豊富なマウスDFAT細胞を用いて機能的な神経細胞を取得する培養系の確立を行った。マウスDFAT細胞をbFGF添加したDMEMで24時間培養したのち、バルプロ酸を添加したDMEMで48時間培養し、神経細胞のセロトニン、ドーパミン、GABA、グルタミン酸およびコリン作動性神経細胞の分化マーカー遺伝子およびタンパク質の発現状況を調べた。また、種々の神経伝達物質を添加し、DFAT細胞由来の神経細胞が発火するかについてはカルシウムイオンのリアルタイムイメージング法によって調べた。リアルタイムPCRの結果、神経細胞特異的遺伝子およびセロトニン(5-HT)作動性神経細胞特異的遺伝子であるTph2の発現量は、培養時間の経過に伴って増加した。また、5-HT神経特異的遺伝子であるSERTは、分化誘導後にのみ発現が検出された。SYP、Tph2およびSERTの局在性を調べた結果、Tph2は核周辺部に、SYPおよびSERTは細胞膜上に蛍光が観察された。DFAT細胞由来の神経細胞に5-HT添加すると、細胞内カルシウムイオン濃度が一過的に上昇した。以上の結果から、DFAT細胞は5-HTを合成・分泌する神経細胞へと分化すること、また5-HT刺激に作動する神経細胞へと分化することが示された。以上の結果から、DFAT細胞は5-HT作動性神経細胞へ分化することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画では、イヌあるいはネコDFAT細胞から機能的な神経細胞を分化誘導する培養系を確立することを計画していたが、神経伝達物質に反応する機能的な神経細胞は得られなかった。そこで、遺伝子情報や神経細胞特異的タンパク質に対する抗体が豊富なマウスDFAT細胞を用いて、機能的な神経細胞が取得できるかについて詳細な検討を行った。その結果、セロトニン刺激に反応する機能的な神経細胞に分化誘導することに成功した。この結果は、骨髄由来幹細胞や脂肪幹細胞においても機能的な神経細胞の分化誘導に成功してないことから、価値ある成果である。しかし、本年度においてイヌおよびネコDFAT細胞から機能的な神経細胞を取得するに至らなかったことから、本研究の進捗状況としてはやや遅れていると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度において確立したマウスDFAT細胞から機能的な神経細胞を分化誘導する培養系を基盤として、イヌあるいはネコDFAT細胞から機能的な神経細胞へ分化誘導する培養系を確立することを試みる。また、イヌあるいはネコDFAT細胞由来の骨芽細胞および平滑筋細胞を免疫不全マウスに移植し、移植後において定着し、組織形成するかを組織学的な検討を行う。以上の結果をもとに、実験用のイヌあるいはネコに移植し、移植後の細胞の動態を詳細に検討する。また、その結果、安全性いかかわるエビデンスが得られたら、本学動物病院並びに民間動物病院において臨床実験を試みる。
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