我々は、BmNPVのタンパク質高発現ベクターとしての機能改良を進めるため、ウイルスゲノムの遺伝学的な改変指針と改変技術の確立を目指して研究を進めている。本研究では、(1)複数の非必須遺伝子の組み合わせによって制御されているウイルス増殖機構を理解し、BmNPVの増殖機構についての研究でこれまで解析されてこなかった機構を明らかにすること、そして、(2)BmNPVベクター改変方法の新たな知見を得ることを目的に研究を進めた。H29年度までに、ORF32とORF36-38 の4遺伝子同時欠損ウイルスにおいて増殖能が顕著に低下することを見出し、これら非必須遺伝子群にウイルス増殖を支える重要な相互作用の存在が示唆された。そこで、まず連続するORF36-38の3遺伝子について1遺伝子、2遺伝子、3遺伝子欠損ウイルス(組み合わせ欠損ウイルス)を作製した。また、本ウイルスの遺伝子発現を網羅的に測定し、遺伝子間の相互作用を定量的に解析する定量PCRシステムを確立した。本年度は、これら3遺伝子の相互作用についてさらに解析を進め、ORF36とORF37の間にsuppressive interactionが存在することを発見した。また、ORF32を加えた4遺伝子間での組み合わせ欠損ウイルスを作製するために、これまで開発を進めてきた酵母内でのBmNPV ゲノムの再構築システムの利用を試みたところ、構築過程でウイルスゲノムの一部が欠損するという現象を見出した。そこで、本法の改良を試み、Gibson assemblyによる安定した再構築システムの構築に成功した。
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