研究課題/領域番号 |
15H04614
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
伊澤 晴彦 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (90370965)
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研究分担者 |
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 部長 (10215923)
佐々木 年則 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (10300930)
津田 良夫 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20207393)
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20435712)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝子 / ウイルス / 感染症 / 昆虫 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
ヤブカの一種ヒトスジシマカは,世界各地で流行するデング熱の主要な媒介蚊であり,高いデングウイルス増殖能と媒介能とを併せ持つ重要な衛生害虫である.また近年,ヒトスジシマカは,デングウイルスと同じフラビウイルス属に属するジカウイルスの媒介蚊としても注目されている.本研究では,デングウイルスがヒトスジシマカ細胞へ感染する初期過程を分子レベルで解析するために,細胞表面で発現するデングウイルス受容体候補を検索し,蚊体内における発現特性を明らかにすることを目的とした. これまでに,2014年に東京都内4ヵ所で捕集されたヒトスジシマカから分離されたデングウイルス1型約10株について,ウイルスゲノムのオープンリーディングフレームの全塩基配列を決定し,国内感染者から検出されたデングウイルス株の塩基配列と比較し,以下実験に用いるウイルス株を選定した. 一方、実験に用いるヒトスジシマカ由来C6/36細胞については,これまでにも,ある細胞系統では昆虫特異的ウイルスが潜在感染しており、デングウイルスの感染増殖に影響があることが報告されている.今回,特定の細胞バンク由来のC6/36細胞には少なくとも2種類のRNAウイルスが潜在感染していることを確認した.一方で,これらウイルスの汚染のない細胞系統もあった.以上の結果に基づき,潜在感染ウイルスのない細胞系統を選び,ヒトスジシマカ由来cDNAライブラリーを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内のヒトスジシマカから複数分離されたデングウイルス1型株の塩基配列を調べたところ,感染者から検出されたウイルス株と一部変異が認められたが,これが細胞感受性等に影響するかについては現時点で不明である.一方,複数の細胞バンク由来のC6/36細胞それぞれにデングウイルスを重感染させた結果,潜在感染ウイルスを保有している細胞系統は,デングウイルスの感受性あるいは増殖性が低下している可能性が示唆された.過去の報告にも,ある種のウイルスの持続感染がデングウイルスの増殖と細胞変性効果を低下させることが示されている.この違いが,潜在感染しているウイルスによる直接的な影響であるのか,あるいは潜在感染ウイルスが宿主細胞のウイルス感染に関わる遺伝子(レセプターを含む宿主因子)の発現を変化させることによる間接的な影響であるのかは不明である. 以上の結果から,解析に用いるウイルス株と蚊細胞株の選定は実験結果に少なからず影響するものと考えられため,これらの評価に時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,ヒトスジシマカ細胞のデングウイルス受容体を探索するために作成したcDNAライブラリー(Gatewayベクターでクローニング)の評価を行う.また,デングウイルスの受容体として知られるヒトのDC-SIGNをコードする遺伝子(CD209)を陽性コントロールとして用いるために,同様の方法でGatewayベクターにクローニングを行う.さらに,近年報告されたヒトスジシマカの全ゲノム情報を利用して,これまでにウイルスレセプター候補として挙げられている遺伝子の発現をチェックする. デングウイルス受容体は膜タンパク質であると考えられるため,cDNAライブラリーをバキュロウイルスに導入し,昆虫細胞に感染させ,新たなウイルス粒子を形成させることで,バキュロウイルスのエンベロープに昆虫細胞で発現した膜タンパク質を取り込ませることができると考えられる.デングウイルス粒子を固相化し,cDNAライブラリーを導入したバキュロウイルス粒子と共にインキュベートすることで,結合能を持つ宿主遺伝子を持つウイルス粒子だけが結合する.スクリーニングにより得られたバキュロウイルスの導入遺伝子の配列を解析し,デングウイルスの受容体候補遺伝子の配列を決定する.
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