研究課題/領域番号 |
15H04619
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松枝 直人 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (90199753)
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研究分担者 |
青野 宏通 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (00184052)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蛍光体 / ゼオライト / 銀 / 波長変換 |
研究実績の概要 |
太陽光線中の紫外線~青色光を吸収し植物が光合成に利用可能な可視光線へと変換する蛍光体を開発するためには、蛍光強度の増大に加え、蛍光体のナノサイズ化、蛍光波長の最適化、経年劣化防止、および、コストダウンが重要な課題となる。銀イオン以外の交換性陽イオンがナトリウムイオンのみのものを基本とし、銀イオンの担持量はゼオライトの陽イオン交換容量の10%から40%の場合に蛍光を発することを確認した。 蛍光強度の増大に関しては、ナトリウムイオンを部分的に他の陽イオンに置き換えて共存させることで、蛍光強度が増大した。ゼオライト種では、共にフォージャサイト構造を有するY型とX型で蛍光強度が大きかった。Y型は400℃程度の加熱を要したが、陽イオン交換容量が小さいため、銀担持量は小さかった。一方、X型は概して加熱処理なしで蛍光を発したが銀担持量が大きかった。X型の場合、亜鉛イオンを共存させると室温での蛍光強度は小さかったが、400℃までの加熱処理で蛍光強度は市販黄色蛍光体の1.2倍となり、肉眼での蛍光色は白色であった。Y型の場合、共存陽イオンをリチウム、バリウムあるいはセシウムイオンとし400℃で加熱することで、市販蛍光体と同等の蛍光強度を得た。 共存陽イオンの種類を変えることで、蛍光ピークの長波長側へのシフトを確認したが、赤色範囲の蛍光は得られていない。励起光の長波長化は、ゼオライト種をアナルサイムやチャバサイトとすることで、400 nm付近までにすることができたが、蛍光強度は小さかった。ゼオライトのナノサイズ化は数種のゼオライトで成功したが、それらを用いた場合の蛍光強度は小さかった。経年劣化防止には亜鉛イオンの共存が有効であったため、今後は、共存陽イオンの最適化などによって銀イオンの酸化防止策を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛍光強度の増大に関しては、X型およびY型を母体とし、市販黄色蛍光体のYAG以上の強度を達成した。ゼオライト結晶のナノサイズ化に関しては、数種類のゼオライト種において成功したが、その場合の蛍光強度は小さかった。蛍光波長の最適化においては、共存陽イオンによる波長シフトを確認したが、未だ、光合成に有効な長波長側へのシフトはできていない。経年劣化対策として亜鉛イオンの共存が有効であり、加速試験などでの実証が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光波長の最適化、ゼオライトのナノサイズ化、および経年劣化防止に関しては、種々の手法を試みたものの、未だ十分な結果が得られていない。平成29年度は、これら3要因に関してさらに検討する。 1.蛍光波長の最適化:銀イオンと共存する陽イオンの種類を変えることで、ある程度の波長シフトがみられたことから、さらにこの方向での探索を行う。同時に、可視光線を吸収する物質を共存させることで、励起波長および蛍光波長の長波長化を目指す。 2.ゼオライトのナノサイズ化:一部のゼオライト種ではナノサイズ化が成功しているが、そのナノサイズゼオライトを母体とした蛍光体の蛍光強度は低い。他の種類のゼオライトのナノサイズ化に、加熱処理前の熟成の最適化によって取り組むとともに、共存陽イオンの最適化による既存ナノサイズ蛍光体の蛍光強度増大を目指す。 3.経年劣化防止:経年による銀の酸化を防止する方策を検討する。亜鉛イオンやアンモニウムイオンの共存が銀の酸化を抑制する傾向を示したため、この両イオンの共存量、担持方法の検討を行う。亜鉛イオンの共存は蛍光強度の増大をもたらす場合もあるため、有望である。近紫外光~可視光線を吸収しない素材で被覆することで酸化を防止する方策も検討する。
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