研究課題/領域番号 |
15H04631
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 周司 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (60192457)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多孔質無機担体 / 酵素触媒 / ワンポット反応 / 不斉合成 / ラセミ化 / 動的光学分割 / 分子内環化反応 |
研究実績の概要 |
各反応生成物を単離精製しない多段階ワンポット反応は、環境低負荷合成法として極めて重要である。最近我々は、この目的に適う、ラセミ化とリパーゼ触媒速度論的光学分割がワンポットで同時進行する動的光学分割法(DKR)を開発した。この際、ラセミ化を触媒するオキソバナジウム種を多孔質無機物質メソポーラスシリカ(MPS)の細孔内部に固定化したことで、リバーゼとの共存性を向上させることに成功し、前述の反応開発に至った。本研究では、この知見を基に、多孔質無機担体の特性を活用する酵素触媒多段階ワンポット不斉合成法の開発を目的とした。本年度は以下の成果を得た。 1. MPSの狭隘空間がラセミ化に及ぼす機能解明: a) 2~4nmの異なる細孔径を有するMPSを用いてバナジウム担持触媒を調製し、これらを用いて、分子サイズの異なる基質アルコールのラセミ化速度を比較検討した。その結果、細孔径と基質サイズに正の相関があることが分かった。b) MPS内表面のシラノール基によって、細孔内部が高極性環境を形成していること、この極性環境がラセミ化を促進することが種々の実験で明らかになった。 2. DKR/分子内環化ワンポット合成法の開発: 適切な位置にジエン部位を有するラセミ体アルコールと、反応活性なジエノフィル部位を有するアシル化剤を用いることで、DKRと分子内環化反応が連続進行することを実証した。本法は、リパーゼ触媒光学分割、バナジウム触媒ラセミ化、分子内環化反応の全く異なる3つの反応がワンポットで進行する不斉合成法である。 3. 4nmのMPSから調製したラセミ化触媒を加水分解酵素と併用することで、DKR法の基質適用性を拡張することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DKRと分子内環化反応が連続進行するワンポット反応の開発途上、実験結果にばらつきが見られた。その原因を解明すべく、多くの反応条件の下で詳細な実験を実施する必要が生じたために、スケジュールが少し遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
DKRと分子内環化反応が連続進行するワンポット反応の開発期間を延長したことで、問題解決の糸口が見えた。今後、本研究の成果を纏める。また、その後は、予定通り、MPSの新機能創出と応用研究を実施する。
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