研究課題/領域番号 |
15H04633
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂貴 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10170672)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | RNA / DNA / 核酸 / オリゴヌクレオチド / 選択的化学修飾 / 官能基転移反応 |
研究実績の概要 |
近年、タンパク質をコードしないノンコーディングRNA (ncRNA)がタンパク質産生と機能を精密に制御し、発生や分化および恒常性維持に中心的役割を果たしていることが明らかにされ、RNAを標的にする効率的で選択的な機能性人工核酸は、革新的な診断や治療技術創造の基礎技術として大きな期待が寄せられている。我々は、RNAとハイブリッド錯体を形成することによって官能基転移を誘起し、部位特異的および塩基特異的に化学修飾する化学反応性人工核酸の開発に成功した。これによってRNAの望みの位置に望みの分子を導入するための原理が確立された。本研究では、さらに概念を展開し、RNAリボース水酸基の化学修飾や、シトシン脱アミノ化反応を誘起するための新しい機能性人工核酸の開発を検討する。さらに、RNAに特異的に導入した化学修飾が遺伝子発現や遺伝子編集に及ぼす作用を精査し、RNAレベルで遺伝子制御を行う斬新なバイオツールへの展開を目指す。 平成27年度は、チオチミン分子にピリジンケト型転移官能基を導入することでアデニンに対する選択的な転移反応を実現した。さらに、リボース2位水酸基のアシル化を実現するため、2-カルボキサミド基を導入した6-アミノプリンヌクレオシドを合成し、オリゴ核酸に導入することに成功した。さらに、アセチル基を導入しRNAヒドロキシ基の官能基転移反応の予備検討を開始した。光誘起能をもつ官能基転移反応を実現するため、まずインドール骨格分子を合成し予備検討を行ったが、光反応を誘起することができなかった。従って、文献を参考にインドリン構造の分子の合成を開始した。mRNAを標的とする反応を正確に評価するため、蛍光標識化クロスリンクオリゴ核酸を用いて反応を行い、 長大なmRNAに対する化学収率を正確に決定する手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で設定した項目のうち、アデニン特異的な反応を確立し、RNA修飾用オリゴヌクレオチドの合成に成功した。さらに、編集機能を達成するための基本骨格の合成に着手し、バイオツールとしての評価法を確立した。このように、当初のほぼ当初の計画どおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、ほぼ計画通りに研究が進行しているので、今後も計画に従って進める。バイトツールとしての展開検討では、基礎技術を獲得したため、次年度はRNAの化学修飾の及ぼす効果を詳細に調べる。また、光誘起能をもつ化合物の合成はまだ予備検討の段階にとどまっているので、より努力を集中して合成を進める。
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