研究課題
本研究では、特異性と汎用性に優れた固形がんのターゲティングシステムとして、がん細胞で取り込みが亢進している分子Aをプラットフォーム高分子に位置選択的に導入した新規リガンド分子の開発を行っている。初年度となる本年度においては、ポリアミノ酸の側鎖に分子Aを導入することによってがん代謝リガンドを構築した。がん代謝リガンドには、in vitroおよびin vivoでの機能評価を行うために、蛍光色素を導入した。合成したがん代謝リガンドの機能評価に関しては、分子Aに対する受容体を高発現しているがん細胞との相互作用をフローサイトメトリーにより評価した。その結果、がん代謝リガンドは、コントロールである分子Bを導入したポリマーと比較して、高い親和性を示すことが明らかになった。また、がん代謝リガンドは、側鎖の分子Aの導入量に依存したがん細胞との相互作用を示すことが確認された。このようながん代謝リガンドのがん細胞との相互作用は複数のがん細胞において確認することができた。次に、がん代謝リガンドのがん細胞との相互作用を共焦点レーザー顕微鏡による観察により評価したところ、4℃においてはがん細胞の表面に局在した蛍光が確認されたが、37℃においてはエンドソーム・リソソームと共局在した蛍光が確認され、がん代謝リガンドはエンドサイトーシスによって細胞に内在化することが示唆された。これらの結果に基づき、がん代謝リガンドの体内動態をマウスを用いて評価したところ、リガンド分子の分子量が腎糸球体によるろ過のしきい値以下であったため、血中からの速やかな消失が認められた。そこで、皮下腫瘍にリガンド分子を直接注射する実験を行ったところ、がん代謝リガンドはコントロールリガンドと比較して長時間腫瘍内に留まることができることを示唆する結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに分子Aを導入したがん代謝リガンドを構築し、がん細胞を用いたin vitro実験ならびにとマウスを用いたin vivo実験によりその機能を明らかにすることができた。
がん代謝リガンドの最適化を進める。具体的には、スペーサーを導入したリガンド分子や表面に分子Aを表面に導入したナノ粒子等を構築し、in vitroおよびin vivo実験により、機能評価を行う。in vivo実験では、腫瘍内分布等を検討する予定である。得られた結果は、設計へとフィードバックし、リガンド分子の最適化を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
Biomater. Sci.
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