研究課題
本研究では、特異性と汎用性に優れた固形がんのターゲティングシステムとして、がん細胞で取り込みが亢進しているグルタミンをプラットフォーム高分子に位置選択的に導入したがん代謝リガンドの開発を行っている。前年度までに、側鎖にグルタミン(Gln)構造を有するポリアミノ酸誘導体がグルタミントランスポーターASCT2を介してがん細胞に取り込まれることを確認し、論文発表を行った(Sci. Rep. 7 (1) 6077 (2017))。そこで本年度は、ASCT2を標的とするリガンド分子の概念を高分子ミセルへと発展させることを目的として、PEG末端にGln構造を有する高分子ミセルを構築した。Glnを導入したPEGとMethoxy末端のPEGの分子量を変化させ最適化を行った結果、Gln導入PEGの分子量が十分に大きくスペーサー効果が期待できる場合に高分子ミセルのASCT2との結合を介したがん細胞による取り込みが起こることを確認できた。一方、上記の側鎖にアミノ酸構造を有するポリアミノ酸誘導体に関して、異なるアミノ酸トランスポーターを標的とするリガンド分子の開発を行った。このアミノ酸Aを導入したポリアミノ酸誘導体は、Glnの場合と同様にトランスポーターを介したがん細胞への効率的な取り込みが確認され、マウスの化学発がんモデルにおいてもがん組織と特異的に相互作用することが確認された。以上のように、本研究では、当初計画に従って、がん代謝リガンドを構築し、その機能をin vitroおよびin vivo実験により確認した。今後は、がん代謝リガンドのがんの診断・治療への応用を進める。特に、アミノ酸Aを導入したがん代謝リガンドに関しては、膀胱がんを標的とした光線力学治療(PDT)へと展開する予定である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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