研究課題/領域番号 |
15H04639
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石田 竜弘 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (50325271)
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研究分担者 |
安藤 英紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 特任助教 (00735524)
清水 太郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 特任助教 (30749388)
南川 典昭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (40209820)
鵜川 真実 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 特任助教 (50735511)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核酸デリバリー / 自然免疫活性化 / Anti-PEG IgM / リポソーム |
研究実績の概要 |
核酸は抗体医薬に次ぐ新規医薬品として期待されているが、その効果獲得には送達システムの開発が重要である。多くのキャリアが報告されているが、臨床試験の初期段階でドロップアウトしている。これは、薬理効果の優劣によってのみ評価が進められ、生体にとって外来異物である核酸・キャリア複合体と生体との相互作用に関する基礎的な検討が行われていないためである。本研究は、単に効果を追求するのではなく、真に重要な核酸・キャリア複合体の生体適合性に着目し、全身投与後の自然免疫システムによる認識、即ちToll-like receptor (TLR)による認識機構、炎症性サイトカインの誘導、これに伴う副反応を詳細に検討することを特色とする。このような検討を通じ、安全で機能的な核酸キャリアの開発に寄与しうる情報を収集し、実際に応用する。当該年度は、免疫回避型(ステルス)核酸含有キャリアの開発を目的として研究を行った。新規高分子修飾剤(ポリグリセリン(PG))の有用性を検討したところ、PGに対する抗体の誘導は確認されず、免疫の回避という観点からは有用性が確認された。その一方で、血中滞留性はPEGと比べると低かったことから、核酸送達キャリアとしての機能は低い事が明らかとなった。ついで、ガングリオシド修飾の有用性について検討した。シアル酸含有糖脂質であるガングリオシドは、α2, 3結合シアル酸を有する糖脂質であり、B細胞上の抑制性の受容体であるsiglec-Gに結合し、抗原特異的なB細胞のアポトーシスを誘導することが知られている。ガングリオシドをPEG修飾リポソーム膜中に組み込んだところ、anti-PEG IgMの誘導が顕著に抑制され、興味深いことに核酸のTLR刺激によるサイトカインの誘導も抑制された。これは、リポソームがPEGを介してMZ-B細胞や血中のB細胞と結合した後、ガングリオシド-siglec-Gの相互作用によりPEG特異的な免疫反応を抑制したからではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
免疫回避型(ステルス)核酸含有キャリアの構築に成功するとともに、抗がん剤封入PEG修飾リポソームとの併用によっても核酸含有キャリアによる免疫活性化を回避できることを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
新たな技術の確立を実現するなど、研究は良好に進んでいる。次年度以降も当初の研究計画を踏まえ、新たに明らかになった事実を加味し、研究を効率的に進める。
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