研究課題
本研究では細胞外pH6~8を感知するOGR1ファミリープロトン感知性G蛋白共役受容体の機能に関して我々が作成した受容体欠損マウスを用いた研究を中心に解析した。また、今後の創薬研究の基礎実験として、GPR4阻害薬の研究も実施した。その結果、以下の結果を得た。(1)GPR4阻害薬のcharacterization: イミダゾピリジン化合物のGPR4阻害薬としての特異性などを細胞レベルで調べたところ、この阻害薬はGPR4に特異的に作用すること、GPR4を介した細胞接着分子発現、受容体分子内移行を抑制することがわかった。(2) 骨代謝: 骨密度はOGR1欠損で増加していた。(3) 脳梗塞モデルとグリア細胞機能:中大脳動脈の脳梗塞モデルを用い、虚血再灌流後の変化を野生型マウス、TDAG8欠損マウスで評価した。その結果、ニッスル染色による梗塞部位の評価ではTDAG8欠損では虚血再還流後の傷害が増悪していた。従って、TDAG8は虚血再灌流モデルでは保護的に機能していると考えられた。(4) 腫瘍形成:化学発癌物質3’-methylcholanthrene (3-MCA)投与後の腫瘍のサイズを測定したが、残念ながら、TDAG8欠損では明らかな差を見いだすことが出来なかった。(5) 呼吸器炎症:卵白アルブミン(OVA)の感作、吸入刺激によるマウスの喘息モデルでOGR1が喘息の進展に関与している。そこで、OGR1受容体の樹状細胞における分化マーカー発現やCa2+シグナル,所属リンパ節への遊走活性を調べたところ、OGR1はおそらくCaシグナルを介して樹状細胞でのCCR7の発現を増加して,所属リンパ節への遊走に関与していることが推定された。また、T細胞にもOGR1が発現しており、Th2サイトカインの産生にもかかわっていることが推定された。
2: おおむね順調に進展している
プロトン感知性受容体の阻害薬の特徴と今後の応用を視野にいれた研究では特異性の面で、今後の細胞、個体レベルでの利用の可能性があることが判明した。また、プロトン受容体マウスでの研究でも、骨代謝、脳梗塞モデル、呼吸器炎症モデルでは予定通りの結果が得られた。しかし、腫瘍モデルでは当初予定したTDAG8の効果を確定することはできなかった。
今後は脳梗塞モデルでは炎症性サイトカイン産生の比較実験、内在性ミクログリアの関与を中心に、また、呼吸器では肺傷害モデルや喘息モデルでの解析系を用い、マクロファージや好中球の関与について調べる予定である。また、ミクログリアでのプロトン受容体の作用機構に関しても解析する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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