研究課題
(1)GPR4阻害薬:北海道大学周東教授、九州大学黒瀬教授らと共同でさらに活性の高いGPR4アンタゴニストを開発し、マウスの心筋梗塞モデル(冠動脈の結紮)で心筋梗塞による生存を有意に高めることを発見した。(2)骨代謝:骨形態計測を行った結果、OGR1は骨形成、骨吸収のいずれの過程に対しても促進的に機能しているが、骨吸収のほうが骨形成よりもOGR1の関わりが大きいために、OGR1欠損マウスでは骨量の増加が観察されたと考えられた。これとは別に英国のDr. Mighellらが見いだしたエナメル質形成不全症の家系においてOGR1が原因遺伝子であることをマウスで実証すべく、我々はOGR1欠損マウスが実際にエナメル形成不全をおこすことを明らかにした。本研究はpH感知性GPCR変異が実際にヒトの疾患に関わっていることを示した初めての報告である。(3)脳梗塞モデルとグリア細胞機能: ニッスル染色の結果、TDAG8欠損では虚血再還流後の傷害が増悪していた。そこで、運動機能変化、MRIを用いた解析、TTC染色などでニッスル染色による脳梗塞部位の変化を確認したところ、いずれのマーカーでもTDAG8欠損で梗塞の進展が観察された。また、Iba-1染色によりミクログリアの挙動を観察したが、TDAG8欠損で活性型が多い傾向がみられた。(4)呼吸器炎症:卵白アルブミン(OVA)の感作、吸入刺激によるマウスの喘息モデルでOGR1が喘息の進展に関与している。そこで、OGR1受容体の樹状細胞における分化マーカー発現やCaシグナル,所属リンパ節への遊走活性を調べたところ、OGR1はおそらくCaシグナルを介して樹状細胞でのCCR7の発現を増加して,所属リンパ節への遊走に関与していることが推定された。また、T細胞にもOGR1が発現しており、Th2サイトカインの産生にもかかわっていることが推定された。
2: おおむね順調に進展している
28年度の研究で(1)GPR4阻害薬がマウスの心筋梗塞モデル(冠動脈の結紮)で心筋梗塞による生存を有意に高めることを発見した。(2)骨代謝では骨形態計測を行った結果、OGR1は骨形成、骨吸収のいずれの過程に対しても促進的に機能していることを推定できた。また、英国のDr. Mighellらが見いだしたエナメル質形成不全症の家系においてOGR1が原因遺伝子であることをマウスで実証すべく、我々はOGR1欠損マウスが実際にエナメル形成不全をおこすことを明らかにした。本研究はpH感知性GPCR変異が実際にヒトの疾患に関わっていることを示した初めての報告である。(3)脳梗塞モデルではミクログリアのTDAG8が 脳梗塞に対して保護的で機能していることを明らかにできた。(4)呼吸器炎症では樹状細胞のOGR1が喘息において重要な役割を果たしていることを同定できた。
(1)GPR4阻害薬ではGPR4は主に内皮細胞に発現しており、内皮細胞におけるGPR4の役割についてサイトカイン産生との関連で調べたい。(2)骨代謝では、これまでの知見では正常状態下でのOGR1の効果は決してあきらかではなく、今後は酸負荷など動物に負荷をかけた状態での効果を見る必要がある。(3)脳梗塞モデルではミクログリアの関与を明らかにすべく、ミクログリア機能を抑制することが知られているミノサイクリンの効果をしらべる。また、TDAG8にくわえ、OGR1、GPR4の脳梗塞モデルでの役割に関してこれまでのTDAG8欠損に用いた方法と同様な手法でOGR1欠損、GPR4欠損マウスを用いて明らかにしたい。(4) 呼吸器炎症ではこれまでのOGR1研究と同様な手法によりTDAG8の喘息モデルでの役割を明らかにしたい。また、我々は以前、気道平滑筋細胞において酸性pHがOGR1を介して著明な炎症性サイトカインIL-6産生を亢進することを見いだしている。そこで、個体レベルで気道の酸性化がどのような変化をもたらすかをHCLを気管に投与することで明らかにしたい。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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