研究課題/領域番号 |
15H04642
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋光 信佳 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (40294962)
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研究分担者 |
高屋 明子 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (80334217)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | RNA / 自然免疫応答 / 核内RNA分解 |
研究実績の概要 |
自然免疫システムは多細胞生物の感染防御系として極めて重要な位置を占める。また、自然免疫システムの異常は各種疾患原因ともなるため、生物系薬学分野において重要な研究対象である。申請者は、細胞内寄生細菌であるサルモネラの細胞感染をモデルシステムとして、細胞レベルの自然免疫応答における核内長鎖ノンコーディングRNAの機能の解明を目指した。この研究を通じて、細胞レベルの自然免疫応答並びに哺乳動物の遺伝子発現制御に関する新しいモデルを提案することを目指す。この研究は新しい創薬の標的を発見するのみならず、核酸医薬などのシーズ開発にも貢献すると考えている。 まず、これまでの研究でサルモネラ感染で発現増加する核内長鎖ノンコーディングRNAを多数同定していたが、このうち、短寿命の核内長鎖ノンコーディングRNAが転写誘導ではなく、核内RNA分解抑制によって発現誘導することを発見した。さらに、サルモネラ感染で核内RNA分解因子がタンパク質分解されることも発見した。これらの結果を総合すると、サルモネラ感染によって核内RNA分解因子がタンパク質分解され、その結果、核内RNA分解経路が抑制されて一群の核内長鎖ノンコーディングRNAが安定化し、核内に蓄積するというモデルを提案した。さらに、核内RNA分解因子をタンパク質分解する責任プロテアーゼの同定を目指し、siRNAノックダウンライブラリースクリーニングを開始した、さらに、siRNAノックダウンライブラリースクリーニングに問題が生じた場合の解決策としての別アプローチも準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サルモネラ感染によるホスト側遺伝子発現制御機構として新しいモデル(すなわち、サルモネラ感染が核内RNA分解因子をタンパク質分解し、その結果、一群の核内長鎖ノンコーディングRNAが安定化して核内蓄積するというモデルを提案した。核内長鎖ノンコーディングRNAの発現制御、あるは、病原体に対するホスト側応答してもこのようなモデルはこれまでに無く、本提案は全く新しいモデルである)を提案できたことは特筆に値する研究成果と考えている。また、このモデルを分子レベルで検証する作業を進め、本年度は次年度の発展を見据えた研究基盤を整備することができたため。すなわち、核内RNA分解因子をタンパク質分解するプロテアーゼを同定するためのsiRNAノックダウンライブラリースクリーニング系を確立した。また、siRNAノックダウンライブラリースクリーニングに困難が生じた場合のバックアップ実験としてBioID法の検討も開始し、生じうる問題についても先回りして対策を用意したことから、研究は順調に進展し、最終的な目標に到達できると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
サルモネラ感染が核内RNA分解因子をタンパク質分解する責任プロテアーゼを同定するためのsiRNAノックダウンライブラリースクリーニングを実施する。ヒトゲノム中には数百種類のプロテアーゼがコードされていると考えられている。平成28年度にこれらプロテアーゼに対するsiRNAを入手した。さらに、このsiRNAノックダウンライブラリーを使って、予備的検討を行い、ノックダウンスクリーニングの系を確立した。本年は本スクリーニングを実施し、責任プロテアーゼを同定し、その生化学的性質等を明らかにする。また、siRNAノックダウンライブラリーが不調であった場合の解決策として、BioID法を使ったプロテアーゼ同定手法についても検討する。BioID法とは、細胞内の一過的タンパク質相互作用を高感度に検出する手法である。BioIDタグを核内RNA分解因子に連結したキメラタンパク質を核内に発現するHeLa細胞株を樹立し、サルモネラ感染時に核内RNA分解因子と一過的に相互作用するタンパク質を網羅的に同定する。この中から、責任プロテアーゼを検索し、同定する。
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