研究課題/領域番号 |
15H04644
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土井 健史 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00211409)
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研究分担者 |
井上 豪 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20263204)
橘 敬祐 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (30432446)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒストンメチル化 / 翻訳後修飾 / 細胞内局在 |
研究実績の概要 |
構造研究について、はじめにSETDB1のメチル化活性を有する領域(N末端から570-1291アミノ酸領域部分)の哺乳類細胞における発現、精製を試みた。哺乳類細胞由来の細胞を用いた発現効率向上システムにより大量発現を試みたが、十分な発現を得る事ができなかった。次にSETDB1とMCAF1の複合体解析については、GSTとHisタグを持つSETDB1部分領域(約200アミノ酸)とMCAF1部分領域(約200アミノ酸)を大腸菌内で共発現できるプラスミドを作製し大腸菌内での発現を行い、その後各種カラムを用いて大量精製を試みた。その結果、今回用いたMCAF1部分領域では、一分子のSETDB1に対して多量のMCAF1が結合していることが分かり、それが原因でSETDB1に付加したタグ切断が困難であることがわかった。次年度は、MCAF1の部分領域をより長くし2分子の相互作用を安定させる領域の決定を行う。 SETDB1の機能解析については、SETDB1の翻訳後修飾を制御する因子の探索を行った。SETDB1の翻訳後修飾制御に必要な領域を探索するため、各種欠失変異体を作製して修飾の有無の解析を行ったところ、修飾に必要な約20アミノ酸領域を決めることができた。その領域について、モチーフ検索を行った結果、SETDB1の翻訳後修飾を制御する有力な候補として低分子量Gタンパク質を見出すことができた。また文献情報に基づきクロマチン制御因子も見出すことができた。 一方、SETDB1の細胞内局在についても調べたが、その結果、SETDB1はヒストン修飾酵素であるにも関わらず、通常は細胞質に存在している事実が判明した。すなわち、SETDB1は細胞質に存在し、必要な場合に核内に移動後、ヒストン修飾酵素として機能することが推測された。(Biochem Biophys Res Commun., 465, 725-31, 2015で報告)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造研究については、SETDB1は機能が明らかになってから15年以上経っているが、未だ構造の解明はなされておらず、非常に難解な研究課題であり、初年度はこれまで誰も成功し得なかった難題の問題点をいくつか洗い出す事ができた。 機能解析については、SETDB1のトリメチル化活性におけるMCAFの役割について計画に上げていたが、再現を示す報告がなされていないことが判明したため、計画を留め置き、それに代わる細胞内局在を調べる計画に切り替えて研究を進めた結果、計画以上の成果が得られ論文に発表する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
構造研究については、哺乳類細胞における活性のあるSETDB1単独の大量発現、精製は非常に難しいと予想されるため、単独発現のシステムを模索しつつも、構造研究では主として複合体の研究を進める事にする。前年度の経験から、タグ切断を必要としない精製系による大量発現と精製を試みる。 機能解析については、前年度の成果によりSETDB1の翻訳後修飾を制御する候補タンパク質を得る事ができたため、この因子の働きについて詳細に調べる。また、メチル化酵素活性や細胞内局在に、これらの因子やMCAF1がどのように関わるかなどについて調べる。
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