研究実績の概要 |
本研究では再生プロセスに関わるシグナル伝達(Wnt, Hh, Notch)等の鍵タンパク質に着目し,それらに結合する天然物を天然物抽出エキスから釣り上げる「標的タンパク質指向型天然物単離」を用いて迅速に単離・構造決定する. 構築に成功したヘッジホッグシグナルの最下流に位置する転写因子GLI1担持セファロースビーズを用い,バングラデシュ産植物Flemingia congestaから,GLI1ビーズに結合する化合物のHPLC上のピークを指標に,3種の新規天然物を含む5種の天然物を単離した.当研究室にて構築したヘッジホッグシグナル阻害剤探索のためのルシフェラーゼアッセイを行ったところ,それぞれ,5.8から14.2 uMのIC50を示すことが明らかとなった.そのうち1種について詳細に解析を進めたところ,GLI1とDNAの複合体形成を阻害することが明らかとなった.さらに,ヘッジホッグシグナルが亢進しているがん細胞,膵臓がん細胞PANC1,前立腺がん細胞DU145および肝がん細胞Huh7に対し,それぞれ9.0, 9.4, 6.9 uMのIC50にて細胞毒性を示した.またウェスタンブロットによりヘッジホッグの標的タンパク質BCL2, PTCH, BMI1を減少させることが明らかとなった.BMI1はがエピジェネティックコントロールによりがんの幹細胞性を上げていることが知られている.そこで,がん幹細胞性を検討できるスフェアアッセイを行ったところ,本化合物存在下では,スフェア形成が阻害され,がん幹細胞性が減少することが明らかとなった.さらに,フローサイトメトリーにて検討したところ,本化合物を25 uM処理をすると,肝がん細胞Huh7において,がん幹細胞マーカーであるEpCAM陽性の細胞が91.4 %から51.6%にも減少することが明らかとなった.
|