研究課題/領域番号 |
15H04651
|
研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
大塚 英昭 安田女子大学, 薬学部, 教授 (00107385)
|
研究分担者 |
杉本 幸子 広島大学, その他の研究科, 准教授 (60549012)
松浪 勝義 広島大学, その他の研究科, 教授 (70379890)
川上 晋 安田女子大学, 薬学部, 助教 (10611311)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 天然活性物質 / 亜熱帯産植物 |
研究実績の概要 |
リュウキュウガキはカキノキ科カキノキ属に分類される常緑中高木で東南アジア、太平洋諸島、台湾、日本では鹿児島、沖縄に分布している。果実は球形であり、熟すると黄褐色になる。果実は魚毒作用があり活性本体はナフトキノン誘導体とされている。リュウキュウガキの乾燥葉をメタノールで抽出し、情報に従って溶媒分配を行い、ブタノール可溶画分を得た。本画分を各種クロマトグラフィーで分離・精製を行い5種の新規化合物を得た(1-5)。得られた化合物は核磁気共鳴をはじめとする機器構造解析によりその構造を決定した。その結果、化合物1はエントカウレン型ジテルペンで2-4はその配糖体であると結論された。糖鎖アピオフラノシルグルコースであった。化合物5はブタノールのアピオシドであった。 ハドノキはイラクサ科ハドノキ属に分類され、伊豆半島以西や台湾に分布している。本植物からは希少骨格を有するハリマン型ジテルペンが単離されている。ハリマン型ジテルペンを生合成するジテルペン環化酵素のクローニングとその塩基配列の同定を行った。ハドノキ新鮮葉より抽出した総DNAを逆転写しcDNAを得、既知ジテルペン生合成遺伝子配列をもとに設計したdegenerateプライマーを用いて相動性の高い配列のクローニングを行った。その結果、約500bpの増幅が見られたころから、PCR産物をpBluescript IIにクローニングしuniversalプライマーを用いてシークエンス反応を行い、塩基配列情報を得た。次に、得られた部分配列から設計したプライマーをもちいてinverse PCRを行いその全長を配列がクローニングできた。得られた遺伝子の推定アミノ酸配列はクワ科Morus notabilisのEnt-copalyl diphosphate synthaseと73%の相同性を示していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年7月29日より、沖縄に赴き、植生調査ならびに、植物の採集を行った。今回の採集では、少量多種を目的として、生葉として持ち帰り、遺伝子の抽出等その後の研究に供することとした。琉球大学農学部元教授のお世話をいただいて、採集を行い、本土に持ち込み禁止(制限)の植物は除外して行った。まず北部の石灰岩地帯を中心に必要な植物を採集した。グミモドキ、ヤンバルアカメガシワ、アミガサギリ、リュウキュウガキ等を採集できた。その後、海岸線から、山に向かう大国林道に向かい、道すがら、ウラジロカンコノキ、ボロボロノキ、オオシマコバンノキ、シロミミズ等、多数を採集できた。ハマジンチョウは沖縄本島では佐敷のマングローブ地帯に生育していることが知られており県指定天然記念物として保護されている。よって、そこでの採集ではではなく、沖縄電力具志川火力発電所敷地内で植栽されているものを、発電所の許可のもとに採集させていただいた。多くの植物を採集できたので、生物活性の予備試験、ならびに遺伝子の抽出操作を行い、今後の研究の基礎固めとしたい。 研究代表者は平成元年から沖縄本島、西表島において、琉球大学のご協力のもとに多くの植物の採集を行わせていただいた。本研究ではその際に採集した植物についても検討を加えている。 西表島で採集した、リュウキュウガキのメタノールエキスのブタノール可溶画分の成分検索。沖縄本島で採集したリュウキュウヨモギの成分。沖縄本島で採集しすでに成分検索が進んでいる、ヤンバルアワブキ、ナンバンアワブキの関連から広島産アワブキの成分検索。ハドノキのメタノールの酢酸エチル可溶画分からの抗リーシュマニア活性物質とジテルペンの環化酵素のクローニング。酢酸エチル可溶画分の活性成分の検索として、ヒラミカンコノキ、オオシマコバンノキ、ケナガエサカキ、ハシカンボク等々多くの沖縄産植物の活性成分を探索中である。
|
今後の研究の推進方策 |
植物採集:沖縄の採集協力者との予定が一致すれば、本年は多量採集を目的としたい。 構造解析:本研究の原点となる沖縄産植物の成分分析、構造解析は引き続き行う。 抗リーシュマニア活性物質:熱帯地域の貧困層に蔓延している、いわゆる顧みられない熱帯病の一つにリーシュマニア症がある。罹患者は1200万人とも言われ、その治療薬としてはミルテホシン、5価アンチモン剤などがあるが、決定的治療薬は見出されていない。本熱帯病はサシチョウバエが媒介する原虫によって発症する。マラリア同様に原虫が原因であり2015年度のノーベル賞に輝いたアルテミシニンのような治療薬の開発が期待される。原虫Leishmania majorを用いたアッセイ系が確立されており、細胞毒性が抗原虫活性が強い新規治療薬の開発を行う。 リン酸化阻害物質の探索:タンパク質の多くは、可逆的リン酸化反応によってその機能が制御されている。リン酸化反応による制御機構は細胞内情報伝達、酵素の活性化、細胞手記の調節、アポトーリスの誘導といった様々な生命現象に関わっていることから、リン酸化反応を制御する化合物は研究試薬や医薬品シード化合物候補として期待される。リン酸化反応に用いるタンパク質は大腸菌の二成分情報系に関わるヒスチジンキナーゼであるEnvZを用いる。リン酸化阻害活性試験では、サンプル存在下でEnvZのリン酸化を行い、リン酸化タンパク質を定量する予定である。 抗多剤耐性天然物:がんの薬物治療においての問題点は、抗がん剤が目的の細胞に導入されても、そこに存在するpgp-タンパク質が能動的に薬剤を排出してしまうことである。よってpgp-タンパク質の活性を抑制する化合物であれば、抗がん剤の効果をより高める可能性があり、このような活性を有する化合物の探索にあたる。
|