化学合成タンパク質を利用した天然物のスクリーニングにより、天然物の鏡像体化合物群から医薬品候補化合物を探索するプロセスの確立と応用に関する研究を展開した。 (1)鏡像体タンパク質の化学合成:カスパーゼの機能を調節するタンパク質に含まれるBIRドメイン(約70残基)の化学合成の検討を行い、XIAPタンパク質中のBIR3ドメインを4つのペプチドセグメントから合成するプロセスを確立した。スクリーニングに用いる各種修飾基を導入したタンパク質を合成するとともに、フォールディング条件に付すことで所望の生物活性を有することを確認した。また、新たに腫瘍免疫の標的分子となるタンパク質の化学合成に取り組み、効率よくペプチドセグメントを得るための精製プロセスについて精査した。 (2)生物活性評価系の構築とスクリーニング:XIAP BIR3ドメイン阻害剤の探索に利用可能な化合物アレイ解析、蛍光偏光法、ELISAによる生物活性評価系を、天然型タンパク質と鏡像体タンパク質のそれぞれについて確立した。SMACペプチドとの結合阻害活性の評価系の構築にあたっては、最適な応答が得られる配列を複数のペプチドから選択した。また、化合物アレイ解析を用いたスクリーニングにより、XIAP BIR3ドメインへの結合活性を有するヒット化合物を同定した。 (3)ヒット化合物の生物活性評価と構造活性相関研究:化合物アレイ解析により得られたSrc SH2ドメインに対する結合を示すヒット化合物について、ELISAによる二次評価を行い、Src SH2ドメインとリン酸化チロシン含有ペプチド間の結合を阻害する複数のヒット化合物を同定した。
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