研究課題/領域番号 |
15H04654
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 信孝 京都大学, 薬学研究科, 名誉教授 (60109014)
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研究分担者 |
大野 浩章 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30322192)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | GPCR / ケモカイン / ペプチド / 創薬テンプレート / 合理的分子設計 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者らの独自の研究基盤を活用し、ペプチド・タンパク質化学の最新の技術を取り入れた新規リガンドの探索と、最新の有機合成技術による複素環骨格構築法を利用したリガンド・阻害剤の効率的化学合成を実施し、計算化学との有機的統合による実践的創薬研究への展開を図る。平成27年度は、ケモカイン受容体CXCR7、スフィンゴシンキナーゼ(SphK)、およびプロテインキナーゼCK2を標的とした創薬研究を実施した。 (1) CXCR7受容体リガンドの構造最適化:環状ペンタペプチド構造からなる新規CXCR7リガンドについて、構成アミノ酸の改変した各種誘導体を合成し、CXCR7受容体結合活性を評価した。これにより、生物活性に必要不可欠なアミノ酸を同定するとともに、複数の高活性化合物を見出した。合成が困難であった誘導体については、あらかじめジペプチドユニットを調製した後、固相合成に利用する新たなプロセスを確立した。 (2) スフィンゴシンキナーゼ(SphK)阻害剤の開発研究:これまでの研究において見出した最も強力なSphK阻害活性を示す4-epi-Jaspine Bについて、アルキル側鎖等に関する構造修飾について検討を実施した。その結果、比較的大きい疎水性置換基を末端部に導入すると阻害活性が向上し、THF環に近い位置にフェニレン基を導入した誘導体はSphK2を選択的に阻害することを見出した。 (3) プロテインキナーゼCK2阻害剤の開発:申請者らが以前見出したチアゾール安息香酸型CK2阻害剤について、安息香酸部分の構造修飾を検討した。ベンゼン環への窒素原子の導入は細胞増殖抑制活性を大きく低下させた。一方で、安息香酸3位への修飾ベンジルオキシ基を有する誘導体は、親化合物よりも高い細胞増殖抑制活性を有することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CXCR7受容体リガンドの構造最適化研究においては、多数の誘導体について受容体結合活性の評価を進めており、構造活性相関情報の取得が順調に進んでいる。スフィンゴシンキナーゼ阻害剤およびCK2阻害剤の開発研究においては、親化合物よりも選択性または阻害活性が向上した誘導体を取得することに成功している。一方で、リガンド候補化合物の合成実験において、化合物の合成経路の不具合を改善する必要が生じた。この問題はすでに解決していることから、研究は全体として順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) CXCR7受容体リガンドの構造最適化:これまでに見出したCXCR7受容体リガンドの構造最適化を進めるとともに、リガンド-受容体相互作用様式を精査する。また、CXCR7受容体リガンドのオピオイド受容体に対する活性評価を実施し、環状ペンタペプチドのGPCRリガンド設計のテンプレート構造としての有用性の検証を引き続き行う。 (2) スフィンゴシンキナーゼ(SPhK)阻害剤の開発研究:平成27年度までの検討結果を受けて、水酸基やアミノ基の構造修飾や置換位置の変更について検討を加え、高活性阻害剤の創出とアイソフォーム選択性の向上を目指した構造活性相関研究を実施するとともに、構造修飾を効率的に実施するための新規THF環構築法の開発を検討する。 (3) 生殖生理に関わるGPCRリガンドの設計と合成:生殖中枢をつかさどる神経ペプチド受容体に対する拮抗剤の設計と合成を行う。リード化合物の優れた受容体拮抗活性を維持しつつ、生殖中枢制御剤に特有な副次的課題を回避しうる分子設計についても検討を加える。
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