平成28年度に引き続き、ペプチド・タンパク質化学の最新の技術を取り入れた新規リガンドの探索と、最新の有機合成技術による複素環骨格構築法を利用したリガンド・阻害剤の効率的化学合成を実施した。平成28年度までに取得した各種受容体リガンドや酵素阻害剤について、計算化学等を用いた作用機序解析を行い、得られた情報を新たな医薬品候補化合物の創製研究に活用した。 (1) CXCR7受容体リガンドの構造最適化:CXCR7受容体結合活性を示すリガンドのうち、高活性のものや特徴的な環構造を有するものについて、分子モデリングによる相互作用解析を行い、受容体結合に寄与する複数の相互作用を明らかにした。また、構造最適化研究を展開し、構成アミノ酸の立体化学の変換により生物活性が向上することを見出した。 (2) スフィンゴシンキナーゼ(SPhK)阻害剤の開発研究:平成28年度までに確立したTHF環上の水酸基とアミノ基の位置を変換した誘導体の効率的合成法を利用してJaspine B誘導体を作成し、このうちの複数の誘導体がJaspine B誘導体に匹敵するSPhK阻害活性を示すことを明らかにした。 (3) 生殖生理に関わるGPCRリガンドの設計と合成:従来にない基本骨格から構成されるNK3受容体拮抗剤の創製を目指して、遷移金属触媒を用いた含窒素複素環骨格の効率的な合成プロセスを確立した。この合成法を活用して得られた誘導体について複数の標的分子に対する生物活性を評価したところ、いくつかの誘導体がキナーゼに対する阻害活性を示すことを明らかにした。
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