研究課題
iPS細胞を介した抗原特異的T細胞の再生によって、体外で大量に産生した抗原特異的T細胞を使った免疫治療の可能性が示唆された。しかしiPS細胞に由来するがゆえに、体細胞としてのT細胞とは異なる危険性を認識する必要がある。最終分化T細胞としての生体内での安定性、造腫瘍性、抗原特異性の変化や喪失、特に標的抗原に暴露した結果として起き得る過剰な免疫反応や再生T細胞そのものの性質変化など、こういった安全性に関する事項は免疫不全マウスへの異種移植による短期観察では正確な評価が困難である。そこで本研究では、ヒトに近縁の霊長類モデルを用いた自家移植、あるいはiPS細胞の有力な臨床応用法の一つであるMHC近似同種移植の系で評価を行い、ヒト臨床における問題点を予見・抽出することを目的とする。平成28年度は、EGFPでマーキングを施したアカゲザル由来再分化T細胞の自家移植実験を2個体でのべ5回行った。抗原特異性の不明なT-iPS細胞由来の再分化T細胞ではあるが、同自家移植実験を通じて細胞の調製から投与・解析に至るまでの幾つかの課題を抽出し、その最適化を進めた。具体的には以下の諸点について検討した。・再分化T細胞の大量調製(EGFPマーキング、刺激回数、phenotype)、再分化T細胞投与(投与前処置、投与細胞数)、再分化T細胞in vivoモニタリング(モニタリングポイント、項目)、再分化T細胞の安全性(投与細胞動態、一般急性毒性、造腫瘍性)自家移植の2個体からのデータについて解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、iPS細胞に由来するT細胞のin vivo動態について、非ヒト霊長類モデルを用いた最初の自家移植実験に着手し、その経過を学会報告した。(第16回日本再生医療学会、3月、仙台)同様の研究は今までに報告がなく、臨床応用に向けての重要な基礎データが蓄積されつつあると考える。最終年度にかけて実験系の最適化と、抗原特異的再生T細胞を用いた移植実験を進める予定である。
平成29年度は、更に個体を追加し、抗原特異性を持つ再生T細胞の自家移植実験ならびに同種移植実験に取り組む。その過程で、再生T細胞の大量調製、投与、モニタリングの諸点を一層最適化し、非ヒト霊長類モデルにおける再生T細胞の安全性を評価する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件) 備考 (2件)
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