研究課題
アレルゲン装填ハイドロゲルパッチを貼付したマウスにおけるアレルゲン特異的IgG/IgE抗体価を測定し、経皮免疫療法が従来の皮下注射法と比較してIgE抗体価の急激な上昇に伴うアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応を誘発しにくいことを明らかとした。また、ハイドロゲルパッチに装填するアレルゲン量およびアジュバント (CpG-ODN) 量を種々検討することによって、食物アレルギーモデルマウスを用いた治療実験に用いるべき経皮免疫製剤の至適な用量を決定した。ハイドロゲルパッチの皮膚への貼付に伴って皮膚常在性抗原提示細胞の所属リンパ節への遊走が促進されることを明らかとし、この遊走促進効果にはThymic stromal lymphopoietin (TSLP) が関与している可能性を見出した。引き続き、ハイドロゲルパッチの貼付が及ぼす皮膚免疫応答への影響について細胞・分子レベルでの解析を進めている。「MPC含有パッチを用いた牛乳アレルギー患児に対する経皮免疫療法パイロットトライアル」を完了し、8名中4名の被験者においてハイドロゲルパッチを用いた経皮免疫療法が食物アレルギーの耐性誘導に有効であることを実証できた。しかし、残りの4名の被験者では軽度の副反応を伴ったため安全を見越して試験を中止した。今後、より安全に長期にわたって継続可能な経皮免疫療法の開発を進めるべく、CpG-ODNをアジュバントとして併用した経皮免疫製剤の臨床研究実施へと展開する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に従って遂行できており、29年度に予定している探索的臨床研究の実施に向けて着実に基礎・前臨床データを収集している。
食物アレルギーモデルマウスを用いた経皮免疫療法の有効性の実証と遺伝子改変マウスを用いた経皮免疫療法の作用機序解明に注力し、経皮免疫療法の有効性・安全性に関する科学的根拠となるデータの蓄積を図る。また、アジュバントを併用した経皮免疫療法のヒトにおける安全性と有効性を検証する臨床研究の実施に向けた準備を加速する。
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