研究課題
腎臓移植患者の過半数は慢性移植腎症(Chronic Allograft Nephropathy, CAN)と呼ばれる移植腎組織の高度線維化を伴う慢性腎臓病様の機能障害に陥るため、移植腎の生着は維持されるものの、機能低下による血液透析への再導入が問題とされている。CANの要因として、生化学データに反映されない軽微な拒絶反応(Subclinical Rejection)の遷延とカルシニューリン阻害薬(CNI)の副作用である腎毒性の蓄積が疑われるが、分子機構は未解明である。そこで、腎臓移植治療におけるCAN克服の手がかりとして動物実験を含めた系統的な解析を計画し、まず初めに臨床標本の収集を中心に開始した。その結果、腎移植後1年以上経過した患者のうち、拒絶反応などの合併症疑いにて来院し、移植腎の病理評価の対象となった症例が約30例、移植術当初より尿並びに術後3か月目の腎生検組織の提供に同意いただいた症例は約50を数えた。当初目的の3年以内に125例収集という計画について、概ね達成できると考えられる。過去、肝臓移植患者における尿中NGAL漏出量がCNI腎症の診断マーカーになり得ることを見出している事から、NGALを中心に検討を進める予定である。ラットモデルにおいては、タクロリムスを用いて作成したCANモデルラット組織作成の再現性について、検討を進めた。一定数のサンプルの収集を待って、計画している項目の測定に進む予定である。
3: やや遅れている
平成27年度の、年度途中に担当医の退職等が重なり、当初の初年度におけるde novo腎移植症例については収集症例数を75例と設定していたが、50例分しか集めることができなかった。目標症例数については3年間の計画と考えると余裕を持って計画していることから達成可能と考えらる。なお、昨年10月より新しい医師の着任により、腎移植治療が再開されたため次年度以後の臨床検体の収集については概ね達成達成できる考えられる。
腎移植症例数は順調に推移していることから、臨床検体の収集を着実に積み重ねることを第一に考え、随時尿中バイオマーカーの測定に着手することで、遅れを取り戻すことは十分に可能と考える。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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