研究課題
腎臓移植患者の過半数は慢性移植腎症(Chronic Allograft Nephropathy, CAN)と呼ばれる移植腎組織の高度線維化を伴う慢性腎臓病様の機能障害に陥るため、移植腎の生着は維持されるものの、機能低下による血液透析への再導入が問題とされている。CANの要因として、生化学データに反映されない軽微な拒絶反応(Subclinical Rejection)の遷延とカルシニューリン阻害薬(CNI)の副作用である腎毒性の蓄積が疑われるが、分子機構は未解明である。そこで、腎臓移植治療におけるCAN克服の手がかりとして動物実験を含めた系統的な解析を計画した。研究第2年度である平成28年度では、[1] 腎組織中薬物濃度測定: LC-MS/MS法によるタクロリムス及び3種の主要代謝物、シクロスポリン、エベロリムス、シロリムスの計7薬物の一斉分析法を用いた組織中濃度の測定、[2] 移植患者・ドナーのCYP3A5多型解析(増田)、[3] 尿中バイオマーカーの測定と評価(増田):プロテインビーズアレイ法等により、Kidney Injury Molecule (KIM)-1を含む候補タンパク質8種の同時定量数値化、について検討を進めた結果[1]~[3]それぞれ35例、32例、55例(KIM-1、neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL)、Monocyte Chemoattractant Protein 1 (MCP-1)、Liver type-Fatty Acid Binding Protein (L-FABP))の収集と実施を終えることができた。一定数の解析結果の収集を終えるとともに臨床経過との照らし合わせ、並びに統計解析を順次進める予定である。
3: やや遅れている
臨床検体の収集については平成27ねん10月に着任した医師によって着実に集まっており、当初の遅れを取り戻すに至っている。一方、平成28年夏に使用していた動物実験施設が感染のため全ての飼育動物の処分と施設の洗浄、一定期間の使用不可となった。そのため、使用する動物実験施設を九州大学薬学部から医学部の施設に変更することを決定し、平成28年度末にようやく使用の許可をいただいた。したがって、動物実験については当初の予定を実施することができていない。
新しく使用許可の降りた動物実験施設において実験系を立ち上げ、遅れを取り戻すように努力したいと考える。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 8件)
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