研究課題
Dystonia musculorum (dt) マウスは、細胞骨格制御因子をコードするDystonin (Dst) 遺伝子の変異により、感覚神経変性および四肢や体幹の捻転運動などのジストニア様症状を示す。dtマウスの神経症状の原因となるDstアイソフォームは末梢神経系と中枢神経系に広く発現している。我々はdt変異マウスにおけるジストニア様症状および不随意運動発現に関わる脳領域や神経回路を明らかにするため、解剖生理学的な解析を行った。我々が作製した遺伝子トラップ Dstアリール(Dst<Gt>アリール)を用いてCre組換えによるコンディショナル実験を行い、神経堤細胞由来の末梢神経系を中心としたコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを作製した。このcKOマウスでは、小脳失調症状が観察された。末梢神経系の変性により運動障害が生じることが明らかとなり、その詳細について、組織学的に検索した。Dst<Gt>ホモマウスでは、生後4週ほどで死んでしまうので、この早期死亡の原因についての検索を行った。咀嚼に関わる咬筋の組織異常や活動異常と、三叉神経運動核の運動ニューロンの変性および、その軸索を含む下顎神経へのマクロファージの浸潤が観察された。咬筋とそれを支配する運動神経の異常により、餌をうまく食べられないために全身症状が悪化する可能性が示唆された。また、Dst<Gt>ホモマウスの脳について組織学的に検討したところ、オリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖に異常があることを明らかにした)。
2: おおむね順調に進展している
C57BL/6の遺伝背景にしたため、マウスの掛け合わせに時間がかかったが、最終年度である平成29年度に、本研究プロジェクトで行なった研究成果を複数の論文としてまとめ、発表することができた。
平成28年度から平成29年度に繰越をして、本研究を行った。最終年度の平成29年度には、Dst<Gt>マウスの三叉神経運動核の異常や、その運動ニューロンが支配する咬筋の異常、脳内のオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖低下などの報告を行った。今後は、これらのさらに詳しい分子メカニズムの解析を行う必要があると考えられる。また、Dst<Gt>アリールとCre/loxPシステムを用いて、運動障害の発症や症状回復に関わる神経回路や神経細胞種を同定することも行っていきたい。
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http://www.med.niigata-u.ac.jp/an2/index.html