研究課題
脊椎動物の中枢神経系における未分化共通前駆細胞から神経細胞およびグリア細胞への細胞運命決定機構はいまだに解明されていない。我々は、中枢神経系における細胞運命決定の分子メカニズムの解明を目指し、網膜をモデルとして視細胞の発生と維持の遺伝子制御機構の解明と網膜色素変性症などの発症機構の解析を行ってきた。網膜未分化前駆細胞は多分化能を有し、おおまかな分類として5種類の網膜神経細胞と、1種類のミューラーグリア細胞を産生することが知られている。マウスの視細胞は共通前駆細胞から1種類の桿体視細胞と2種類の錐体視細胞のサブタイプに分化する過程で、オプシンやトランデューシンを含む複数のサブタイプ特異的な遺伝子群が厳密に発現制御されて視細胞のアイデンティティーが確立されることが知られている。我々は発生期の桿体視細胞に発現するSAMドメイン蛋白質Samd7が、PRC1ポリコーム複合体のPhc2やRing1Bと会合しPRC1を制御することで、H3K27メチル化やH2AK119ユビキチン化などの抑制性ヒストン修飾を通じて桿体視細胞特異的な遺伝子発現を実現し、視細胞アイデンティティーを確立していることを見出した。従来、網膜視細胞の分化成熟は、複数の転写因子の組み合わせによって制御されていると考えられてきた。本研究によって、Samd7蛋白質が神経細胞特異的なPRC1のコンポーネントととして機能し、エピジェネティックな遺伝子発現制御メカニズムが中枢神経細胞のアイデンティティの形成に重要であることが初めて明らかとなった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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