研究課題/領域番号 |
15H04671
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西 真弓 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40295639)
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研究分担者 |
堀井 謹子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80433332)
東 超 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (90326322)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 記憶の痕跡 / 光遺伝学 / 幼児虐待 / c-fos遺伝子プロモーター / ストレス |
研究実績の概要 |
虐待など幼少期養育環境の劣悪化によるストレスが、成長後の脳の機能・構造に重大かつ継続的な問題を引き起こすことが報告されている。しかし、幼少期のストレスが脳のどの部位に記憶の痕跡として残され、生涯にわたって行動に影響を及ぼすのかは未だ解明されていない。本研究では、幼児虐待の動物モデルの一つである母子分離マウスを用い、母子分離ストレスによって活性化する神経細胞を非可逆的にラベルし、成体において母子分離記憶の痕跡をオプトジェネテイクスを用いて再活性化することにより、母子分離記憶を想起することが出来るかを検討し、「虐待は繰り返される」という概念の分子基盤を明らかにし、劣悪な幼少期養育環境が精神神経疾患等を引き起こすメカニズムの解明を目指す。平成27年度に引き続き、c-fos promoter-tTA-TRE-Creマウスの作製を試み、c-Fosの免疫組織化学で見られたのと同じ領域でtTA、Creの発現が見られるかの検討を進めた。一方、虐待が繰り返されるかについて、母子分離を受けた雌マウスを通常通り飼育し、正常雄マウスと交配して妊娠・出産させる実験を行なった。生後2~3日までに約85%の子マウスが死亡することを見出した。その原因を調べるため、出産の前日からビデオ撮影によって母マウスの養育行動を撮影して解析した結果、母子分離を受けた雌の巣作り、仔運び、licking等の養育行動がコントロールの母マウスに比して有意に低下することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記研究実績の概要のところで示したマウスを用いて母子分離を行い、c-Fosの免疫組織化学で見られたのと同じ領域でtTA、Creの発現が見られるかの検討を進めている。また、虐待が繰り返されるかについて、母子分離を受けた雌マウスを通常通り飼育し、正常雄マウスと交配して妊娠・出産させる実験を行なった。生後2~3日までに約85%の子マウスが死亡することを見出した。その原因を調べるため、出産の前日からビデオ撮影によって母マウスの養育行動を撮影して解析した結果、母子分離を受けた雌の巣作り、仔運び、licking等の養育行動がコントロールの母マウスに比して有意に低下することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
CreリコンビネースによってloxPに挟まれたStopコドンがはずれ、ChR2-mCherryが発現するコンストラクトをRosa26遺伝子座にノックインしたTgマウス(RBRC05158)を理研バイオリソースセンターから入手し、上記のマウスと交配させる。テトラサイクリン類似化合物のドキシサイクリン(Dox)オフの状態においてc-fos遺伝子プロモーター制御下でChR2-mCherryを非可逆的に発現するTgマウスを作製する。予め、Doxオン/オフによってc-fos遺伝子の発現が調節されるかについて、マウスに急性拘束ストレスを負荷し、c-fosが顕著に増強することがわかっている視床下部の室傍核において、mCherryを指標にして検討する。また、このTgマウス作製と並行して、母子分離を経験した雌マウスを野生型の雄と交配させ、母子分離を経験したマウスが母親になった際の養育行動(仔運び、巣作り、licking等の行動)を詳細に解析する。
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