研究課題
網膜視細胞は、感覚刺激に応じて持続的な神経伝達物質を放出するために特殊に分化したシナプス、リボンシナプスを有する。本研究は、リボンシナプスのシナプス前側に存在するシナプス小胞を係留する高電子密度構造物であるシナプスリボンの構成分子として、申請者らが見出した低分子量G蛋白質ADPリボシル化因子6 (Arf6)の活性化制御分子BRAG1に関する自己所見を発展させて、シナプスリボンにおけるArf6経路の機能解明と分子ネットワークの解明を目指す。初年度は、申請計画に従って以下の点を実施した。(1)BRAG1ノックアウトマウスの樹立:シナプスリボン構成分子であるBRAG1の遺伝子欠損マウスを定法に従い樹立した。現在交配を行い、平成28年度にリボンシナプス形成に関する形態学的解析および網膜電図による網膜情報伝達に関する生理学的解析を実施する予定である。(2)酵母ツーハイブリット法を用いた新規シナプスリボン構成分子の同定:シナプスリボンの主要な構成分子であるRIBEYEを餌に用いて酵母ツーハイブリット法を用いて結合タンパク質の同定を実施した。その結果、RIBEYEのN末領域及びC末領域に結合する分子の単離に成功した。現在、特異抗体を作製し、免疫組織学的に網膜シナプスリボンでの局在及び免疫沈降法により複合体の形成の有無を検討し候補分子の絞り込みを行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度はBRAG1ノックアウトマウスの樹立と交配が当初予定より遅れたため、機能形態解析の実施まで至らなかった点を除いては、概ね順調に進展している。
平成28年度は以下の実験計画に従って進める。(1) BRAG1の遺伝子欠損マウスを用いたリボンシナプスの生理学的解析光刺激に伴って生ずる網膜の電気的活動を測定する網膜電図を用いて野生型とホモ型マウスの網膜の視覚情報伝達の障害の有無を測定する。網膜電図での記録波形のうちa-c波、律動様小波など振幅と潜時に着目して異常の有無を検討する。さらに、視機性応答などの視覚機能測定を行う。網膜電図解析に関しては三重大学眼科学講座 近藤峰生教授との共同研究で実施する予定である。(2)酵母ツーハイブリット法を用いた新規シナプスリボン構成分子の同定平成27年度に単離した候補分子に対する特異抗体を作成するために、大腸菌に発現し精製した融合タンパク質あるいは合成ペプチドを抗原として、ウサギ及びモルモットに免疫を施し抗血清を作成する。ウエスタンブロット解析で特異性を確認した後、免疫沈降法によりRIBEYEとの免疫複合体の形成を検討する。さたに免疫組織学的解析により、候補分子の網膜における局在およびRIBEYEとの共局在を免疫組織学的に検討する。さらに免疫電子顕微鏡解析法を用いて、抗原分子のシナプスリボンでの局在様式を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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