研究課題
シナプスリボンは、網膜視細胞などの感覚神経細胞のシナプス前側に存在する高電子密度構造物で、感覚刺激に反応した持続的な神経伝達物質の放出に関与するものと考えられている。しかしながら、分子構成や機能的役割に関して多くの未解決な点が残されている。本研究は、申請者らの新規シナプスリボン構成分子としての低分子量G蛋白質ADPリボシル化因子(Arf)活性化制御因子BRAG1の発見(Katsumata et al., 2009)から着想したもので、網膜シナプスリボンにおけるArf経路の機能解明と分子ネットワークの解明を研究目的とする。本年度は実験計画に従って以下の研究成果をあげた。(1)リボンシナプスにおけるArf6活性化制御因子BRAG2aの局在機構の解明:リボンシナプスにおいて、BRAG2のアイソフォームであるBRAG2aが、視細胞のシナプス終末の突起先端部において局在することを免疫電子顕微鏡解析により微細構造レベルで明らかにした。さらに、GSTプルダウン法、免疫沈降法、in situ proximity ligation法などの多角的な解析方法によりBRAG2aが視細胞においてジストロフィン複合体とリボンシナプスにおいて複合体を形成することを明らかにした。さらに、視細胞で発現するジストロフィンDp426, Dp260, Dp140を欠損したExon52ノックアウトマウスの網膜の視細胞において、BRAG2aの発現が著明に減少することを見出し、BRAG2aの局在機構の一端を明らかにした(Sakagami et al., 2017)。(2) 視細胞特異的BRAG1ノックアウトマウスの樹立:BRAG1の視細胞における視覚シグナル伝達やリボンシナプス形成における機能を明らかにするために、BRAB1(flox)マウスと錐体・杆体細胞においてCreリコンビナーゼを発現するCrx-Creトランスジェニックマウスの交配により、視細胞特異的BRAG1ノックアウトマウスの樹立を進行している。
2: おおむね順調に進展している
リボンシナプスにおけるBRAG2aの局在機構を明らかにし、論文発表して成果を挙げた。BRAG1ノックアウトマウスを用いた視覚情報伝達における機能解析に関しては、全身ノックアウトマウスにおける出産や養育行動の問題から実験に必要な仔が得られず実験計画がやや遅延している。視細胞特異的BRAG1ノックアウトマウスの樹立し、網膜電図による解析と電子顕微鏡によるリボンシナプス形成における役割の解明の完遂を目指す。
BRAB1(flox)マウスと錐体・杆体細胞においてCreリコンビナーゼを発現するCrx-Creトランスジェニックマウスの交配により、視細胞特異的BRAG1ノックアウトマウスを樹立し、網膜電図による解析と電子顕微鏡によるリボンシナプス形成における役割の解明の完遂を目指す。また、酵母ツーハイブリット法により見出したシナプスリボン構成タンパク質の候補分子のシナプスリボンでの発現解析を施行する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.med.kitasato-u.ac.jp/~sakagami/