研究課題/領域番号 |
15H04680
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
増木 静江 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (70422699)
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研究分担者 |
上條 義一郎 和歌山県立医科大学, みらい医療推進学講座, 准教授 (40372510)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動習慣 / vasopressin V1a受容体 / 脳血流 / 血圧反射 / 筋血流 |
研究実績の概要 |
我々は最近、①「vasopressin V1a受容体の多型の一つを有するヒトは不精で運動習慣が定着しにくい」ことを発見した。さらに、そのメカニズムについて、②「V1a受容体欠損マウスでは運動開始時の血圧上昇が起きず、自発運動が阻害されている」ことを明らかにした。そこで本研究の第1の目的は、このマウスで得られた結果が、運動習慣が定着しにくいヒトにも当てはまるか、を検証することであった。平成27年度は、ヒト自発運動開始時の筋血流調節における脳内バゾプレシンの役割について検討した。
若年健常男性を無作為にAVP群(N=18)、CNT群(N=14)に分け、測定1時間前にデスモプレシン(10 micro g/0.1ml) または生理食塩水(0.1ml)を二重盲検で点鼻投与した。その後、最大酸素摂取量の50%相当の自転車運動を3分間負荷し、その際の脳血流(超音波ドップラー)、心拍数(ECG)、血圧(Finometer)、大腿部筋組織血流量(近赤外分光法)、呼気ガスをそれぞれ連続測定し、血圧波形より心拍出量、末梢血管抵抗を算出した。この測定を運動開始30秒前からのカウントダウン(CD)「あり」、「なし」の2条件で無作為に各4回ずつ計8回行った。 その結果、CD「あり」では、実際の運動開始に先行して、脳血流量、心拍数、血圧、酸素摂取量の上昇、末梢血管抵抗の低下、筋血流量上昇が、この順序で起こったが、「なし」では起こらなかった。 また、その際の筋血流量の増加度はAVP群でCNT群に比べ有意に高かった。 以上から、運動開始前のCDで実際の運動に先立って呼吸循環反応が開始されること、それが大脳皮質から効果器に順次起こること、この反応に脳内AVPが一部関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、これまでに、マウスにおいてV1a受容体が運動開始時の血圧上昇に関与していることを報告した。しかし、ヒトにおいては不明であった。そこで、平成27年度は、まず若年者を対象に実験を行い、ヒト自発運動開始時の筋血流調節における脳内バゾプレシンの役割を初めて明らかにした。このようにおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の結果より、脳内バゾプレシンは運動開始時の筋血流の増加に関与していることが示唆された。そこで、そのメカニズムを明らかにするため、今後、運動開始時の筋血流と筋交感神経活動反応に焦点をあて、実験を進める。さらに、 運動習慣の定着率が低い中高年者では、運動開始時の昇圧反応が阻害されているかについても検討する。
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