研究課題
我々は最近、「V1a受容体欠損マウスでは運動開始時の血圧上昇が起きず、自発運動が阻害されている」ことを明らかにした。そこで本研究の目的は、1)このマウスで得られた結果が、ヒトにも当てはまるか、2)運動+サプリメント摂取により自発運動開始時の昇圧応答は改善するか、を検証することであった。若年男性を対象に、半臥位で、片足自転車運動を1分間負荷し、その際反対足の腓骨神経からMSNA(microneurography)を記録した。また、心拍数(ECG)、血圧(Finometer)、大腿部筋組織酸素飽和度(近赤外分光法)、をそれぞれ連続測定した。この測定を運動開始30秒前からのカウントダウン(CD)「あり」、「なし」の2条件で無作為に各4回ずつ計8回行った。また、同プロトコールを臥位でも行った。その結果、CD「あり」条件においてのみ、運動開始前30秒間の心拍数、心拍出量、大腿部筋組織酸素飽和度が増加し、血圧、総末梢血管抵抗は低下した。この際、MSNAの低下を認めた。一方、半臥位から臥位に姿勢変換すると、これらの反応は消滅した。以上から、ヒト自発運動開始時にCDをかけると、MSNAは低下し、筋血管が拡張し、筋血流が増加すること、しかし、この反応は臥位では消滅することが示唆された。男性20名 (~77歳) を無作為に2群に分け、インターバル速歩トレーニング(IWT)を1ヶ月間実施させ、その間、乳蛋白質強化(10.5g)乳飲料(M条件)、または、等カロリーの糖質電解質溶液(E条件)を毎日の運動直後にそれぞれ200ml摂取させた。その前後で、自発運動開始時の昇圧応答を測定した。その結果、IWT後のM条件でのみ、運動開始時のCDを受けて、脳血管コンダクタンスが上昇した。以上から、運動後の乳製品摂取は、運動開始時に脳血管を拡張させ、運動を開始しやすいように働くことを示唆された。
2: おおむね順調に進展している
我々は、これまでに、マウスにおいてV1a受容体が自発運動開始時の昇圧応答に関与していることを報告した。しかし、ヒトにおいては不明であった。そこで、平成28年度は当初計画通り、ヒトにおいて、1)自発運動開始時の大腿部筋組織酸素飽和度と筋交感神経活動、2)運動+サプリメント摂取と自発運動開始時の昇圧応答について検討した。このようにおおむね順調に進展している。
平成28年度の結果を踏まえて、ヒトにおいて、1)V1a受容体は自発運動開始時の昇圧反応に関与しているか?2) サプリメント摂取により運動開始時の昇圧反応は改善するのか?について、引き続き検討する。さらに、3) V1a受容体遺伝子多型と昇圧応答についても研究を進める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 13件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Exerc Sport Sci Rev
巻: 45 ページ: 154-162
10.1249/JES.0000000000000113
PLoS ONE
巻: 12 ページ: e0176757
10.1371/journal.pone.0176757
J Physiol (Lond)
巻: 595 ページ: 1185-1200
10.1113/JP273281
ALA-Porphyrin Science
巻: in press ページ: in press
Eur J Appl Physiol
巻: 116 ページ: 203-15
10.1007/s00421-015-3267-9
J Appl Physiol
巻: 120 ページ: 87-96
10.1152/japplphysiol.00582.2015
巻: 121 ページ: 1021-1031
10.1152/japplphysiol.00033.2016
理学療法
巻: 33 ページ: 1102-1110
腎と透析
巻: 80 ページ: 315-320
http://www.shinshu-u.ac.jp/institution/ibs/topics/cat5591/ISSN2016-IBSIS4-20161109.html