研究課題
これまでに、グルカゴン遺伝子欠損マウス(GCGKO)と対照マウスの肝臓におけるアミノ酸・糖代謝関連酵素遺伝子の発現の日周変動、胎生期から新生時期にかけての発現の変動の解析、グルカゴン投与により肝臓でのアミノ酸代謝酵素発現がどのように制御されるかについて解析を行った。これらの過程でregulator of G-protein signaling 16(RGS16)の肝臓における発現がグルカゴンにより制御されることを見出したため、RGS16ノックアウトマウスを入手し、グルカゴン・RGS16ノックアウトダブルノックアウトマウスを交配により得て、その表現型、特に肝臓における遺伝子発現と膵臓ランゲルハンス島の形態を解析した。GCGKOとGCG/RGS16 double KOの間では膵臓ランゲルハンス島の形態に明らかな差は認められず、また肝臓における遺伝子発現パターンにおいても特筆すべき変化はみとめられなかったため、現時点ではRGS16がグルカゴンによる代謝制御やランゲルハンス島α細胞の増殖制御において重要な役割をはたしている可能性は低いと考えられる。一方、やはりグルカゴンにより制御される遺伝子としてニコチンアミド代謝に関わる酵素を同定している。同遺伝子のノックアウトモデルはこれまでに作成されていないが、全身で同遺伝子の発現を欠損する動物が早期致死となる可能性は十分に考えられる。そこで、cre-loxPシステムにより、組織特異的に同遺伝子の発現を欠損する動物モデルを作成する必要があると考え、同モデルの作成を進めている。
3: やや遅れている
組織特異的にニコチンアミド代謝に関わる酵素遺伝子の発現を欠損する動物モデルの作成において、キメラマウスの死亡がしばしばみられたために、遺伝子ターゲティングの方法の再検討などを要した。その結果、当初予測より数ヶ月の遅延が生じている。しかしその後、キメラマウスから初代雑種マウスへの改変遺伝子の伝達も確認できたため、今後は概ね計画通りの進捗が期待できる。なお、この新規遺伝子改変マウスを用いる実験と独立して進めている実験は概ね順調に進捗している。これらの状況を総合した進捗状況判断としては、「やや遅れている」とした。
グルカゴンにより制御される遺伝子として同定した、ニコチンアミド代謝に関わる酵素遺伝子の組織特異的ノックアウトモデルの作成を進め、その表現型解析を進めるのと並行して、GCGKOとの交配を進める。一方、グルカゴンがアミノ酸代謝の制御において不可欠な役割を果たすことが、我々の研究から明らかとなっているが、これまでに取得したアミノ酸・糖代謝関連酵素遺伝子の発現の日周変動、胎生期から新生時期にかけての発現の変動の解析、グルカゴン投与により肝臓でのアミノ酸代謝酵素発現制御に関するデータに加えて、高蛋白質食負荷実験を進める。高蛋白質食負荷実験の結果を解析することにより、肝臓におけるアミノ酸代謝制御と膵臓における内分泌細胞の増殖制御においてグルカゴンが果たす役割を明確にしたい。
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