肝臓においてグルカゴン依存的に発現が増加する遺伝子としてアミノ酸を糖新生の基質へ転換する酵素やニコチンアミド代謝酵素をコードする遺伝子を同定してきた。平成29年度は、このうちニコチンアミド代謝酵素の遺伝子改変動物を得た上で、グルカゴン遺伝子欠損動物モデルとの交配を進めるに至った。両者の遺伝子を欠損する動物モデルを得ることや、その表現型解析には平成31年度もしくは平成32年度まで研究期間を要することが予測された。本研究の研究期間は平成27-30年であったが平成29年度に新規応募を行ったところ採択されたため、本研究は平成29年度を最終年度として、平成30年度からは「グルカゴンによるニコチンアミド代謝制御の生体における意義の解明」を新たな課題名として研究を展開することとなった。 このほかにはグルカゴン遺伝子欠損動物モデルおよび対照群に対して高蛋白質食を与え、その応答を解析した。血中グルカゴン濃度・血糖値・血中アミノ酸濃度を測定したほか、肝臓における遺伝子発現解析を行った。その結果、グルカゴンが食事による蛋白摂取量の変化において生体の恒常性を維持する上で不可欠であることを示唆するデータが得られている。グルカゴンの作用の一部はFGF21の発現促進を介して発揮されるとする報告がされる一方で、FGF21は蛋白質の不足状態で発現が誘導されるという報告もなされたいる。我々の検討では、高蛋白質食負荷によりグルカゴンの産生が促進される一方で、FGF21の発現は抑制されることを見だした。すなわち、グルカゴンによるFGF21の発現促進は蛋白質摂取量を増やすことによりみとめられなくなることが明らかとなった。
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