研究課題/領域番号 |
15H04685
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金井 好克 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60204533)
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研究分担者 |
大垣 隆一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20467525)
奥田 傑 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50511846)
中込 咲綾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (60423894)
永森 收志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90467572)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん / アミノ酸トランスポーター / リン酸化プロテオミクス / 腫瘍血管新生 |
研究実績の概要 |
LAT1 によるロイシン取り込みの細胞刺激効果を、リン酸化プロテオミクスにより検討した。平成27年度は、HeLaS3細胞、膵がん由来 MIA PaCa-2細胞、膵がん由来 PANC-1細胞を用いて解析を進めた。ロイシン取り込み阻害には、LAT1非選択的低親和性競合阻害薬および選択的高親和性非競合阻害薬を用いた。大きな変動が見られるシグナル経路は、非選択的低親和性競合阻害薬と選択的高親和性非競合阻害薬で共通していることが明らかになった。 LAT1が腫瘍血管新生に寄与していることを実証するために以下の実験を行った。ヌードマウスを用いて作製したヒト腫瘍ゼノグラフにおいて、腫瘍内に侵入したマウス由来の腫瘍血管内皮におけるLAT1の発現を免疫染色により確認し、ヒトがん患者の病理切片においても、 腫瘍血管内皮にLAT1が発現していることを明らかにした。HUVEC細胞を用いたin vitro血管新生アッセイにおいて、LAT1阻害薬およびLAT1遺伝子ノックダウンが、有意に血管新生を抑制することを確認した。 次年度に予定していたex vivoの大動脈リング法を前倒しで実施し、LAT1阻害薬による血管新生抑制効果を確認した。また、HUVEC細胞におけるLAT1の発現変動解析から、血管新生促進因子がLAT1の発現を誘導することを見出した。局在解析に必要な、蛍光タンパク質融合型LAT1発現プラスミドを作成し、共焦点レーザー顕微鏡による予備検討的な観察を実施した。また、次年度以降のin vivo解析に重要な血管内皮特異的・時期特異的なLAT1コンディショナルノックアウトマウスの系統を樹立した。 さらに MIAPaCa2 、 PANC-1 細胞を用いたMigration assay により、がん細胞株の LAT1 抑制による細胞遊走能へ 影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン酸化プロテオミクスによる検討については、解析手法の網羅性及び正確性のさらなる向上に成功し、当初より網羅性及び正確性の高いデータセットの取得が可能になった。したがって、解析した細胞株数は計画を下回ったものの、得られた情報の量と質は当初の計画を上回っている。 血管新生に関連した解析については概ね計画通り実施できた。 当初実施を予定していなかったが、マウスを用いた結果を受け、重要な解析であるヒトがん病理切片中の血管内皮におけるLAT1の発現の確認をおこなうことができた。またex vivoの血管新生アッセイ系を用いた解析を一部前倒しして進めることができた。さらに次年度に計画を予定していた、細胞周期との関連やin vivo 転移モデルの作製についても、前倒しをして予備検討を進めた。 以上のように、解析系の著しい性能向上も得られ、さらに一部の解析については研究計画を前倒しするかたちで進めることができている。また、得られた実験結果に基づき、適宜計画の変更をおこないながら研究を進めている為、当初予定していなかった解析を実施する必要も生じているが、これらは研究全体としての進捗に大きく貢献している。したがって研究は概ね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸化プロテオミクスに関連した研究については、性能が向上した解析系を用いて、複数の細胞株についてデータを取得し、シグナルへの影響について解析を進める。また、培養がん細胞およびヌードマウスに形成させたゼノグラフト腫瘍において、阻害薬長期間投与によるプロテオームおよひリン酸化プロテオームの変動を検討する。 血管新生に関連した研究は、蛍光タンパク質融合型LAT1を用いて、in vitro血管新生アッセイ系でHUVEC細胞内でのLAT1の局在をライブイメージング観察する。種々のin vivoの血管新生アッセイを実施する。LAT1阻害薬を用いた検討と、作製したLAT1コンディショナルノックアウトマウスを用いた検討を併せておこなう。リン酸化プロテオミクスにより、LAT1抑制の効果を網羅的に解析する。以上によりLAT1の腫瘍血管新生における役割を解明する。
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