研究課題/領域番号 |
15H04687
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
五嶋 良郎 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00153750)
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研究分担者 |
中村 史雄 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10262023)
及川 雅人 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (70273571)
古賀 資和 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00637233)
増川 太輝 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助手 (10711898)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生理活性物質 / ドーパ |
研究実績の概要 |
計画調書の実験計画に従い、神経伝達物質ドーパ受容体分子GPR143 (OA1) の遺伝子欠損マウスの表現型解析を主要な取り組みとして以下の研究を遂行した。 1) ドーパの作用を野生型とGpr143遺伝子欠損マウスGpr143-/yとの間で比較・検討し、同遺伝子欠損マウスでは、下位脳幹部孤束核 (NTS) におけるドーパの降圧・徐脈応答が消失する事を確認した。 2) 1)の結果を踏まえ、ドーパがGPR143を介して圧受容器反射による血圧制御に関わるかを検討するため、末梢血管収縮作用を有するα1アドレナリン受容体作動薬であるフェニレフリンの末梢投与による血圧上昇とそれにともなう徐脈応答を野生型とGpr143-/y マウスとの間で比較したところ、フェニレフリンに対する血圧上昇そのものが野生型に比し、Gpr143-/yマウスにおいて低下する事実を発見した。Gpr143-/yマウスの動脈を摘出し、野生型との間でフェニレフリンによる収縮応答を検討したところ、Gpr143-/y動脈においては、フェニレフリンに対する収縮応答が野生型に比して減弱することが明らかとなった。 3) これらの結果を踏まえ、GPR143が何らかの機序でα1アドレナリン受容体機能を修飾する可能性が考えられた。現在、これら二種のGタンパク質連関型受容体 (GPCR) が相互作用するかいなか等の検討を開始した。 4) 脳内ドパミン作動性神経伝達と、ドーパ・GPR143伝達系との機能的連関の可能性を検討するため、ドパミンD1ないしD2受容体作動薬のマウス行動に及ぼす効果を野生型とGpr143-/yマウスとの間で比較検討した。その結果、Gpr143-/yマウスにおいては、D2作動薬による行動抑制の程度が野生型に比較し、減弱する傾向を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画調書の2つの主な目標は、GPR143の心血管系と、ドーパ作用の重要な作用部位である脳内ドパミン作動系における生理学的役割の解明である。上記の研究実績は、今後さらなる分子メカニズムの解明が必要と考えられるが、本目標の契機をすでに把握し、その分子基盤解明の足がかりを得ることに既に成功している。これが現在までの進捗状況を表記のように判断する事由である。
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今後の研究の推進方策 |
GPR143の生理学的役割を解明するため、同受容体がアドレナリンα1受容体のどのサブタイプと特異的に相互作用するのかを検討する。またGPR143が他の GPCR とも相互作用するのか否か、相互作用するとしたらそこに機能的連関が存在するのか否かを培養細胞、再構成系および生体内において検討する。一方、GPR143とドパミン作動性神経系との機能的相関については、行動学的解析を継続するとともに、GPR143とドパミンD2受容体との機能的相互作用を生化学的あるいは電気生理学的に解析する。また、脳内におけるこれらの受容体、およびドーパ合成酵素であるチロシン水酸化酵素 (TH) 陽性細胞の解剖学的な位置関係を免疫組織化学および in situ hybridizationなどの方法を組み合わせることにより明らかとする。また一方、ドーパ神経伝達物質仮説のさらなる確証を得るため、ドーパ含有小胞の存在の有無を検証する。現時点において、ドーパを特異的に認識する抗体を入手し、これを用いた免疫電子顕微鏡による解析を検討するとともに、すでに解析が進みつつあるシナプス小胞におけるトランスポーター分子をスクリーニングし、ドーパを基質とするトランスポーター分子の存在の有無を検討する。
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