研究課題/領域番号 |
15H04689
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
松岡 正明 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (70222297)
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研究分担者 |
羽生 春夫 東京医科大学, 医学部, 教授 (10228520)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 神経細胞死 / CLSP / ヒューマニン |
研究実績の概要 |
1) 基礎研究として、CLSPと新たに同定したその阻害因子14-3-3 の基本的な機能解析。 2)前臨床試験として、CLSP transgenic AD動物モデル表現系の変化の検討。3) 臨床研究として、AD罹患者由来のサンプル(髄液/脳組織)を用いて、当該分子ADにおける変動の検討。以上の項目からなる研究プロジェクトの2年目の研究を行なった。 <基礎研究>あらたなCLSPの阻害因子として、14-3-3タンパク質群以外に、ApoEタンパク質群、 calreticulinを見いだした。さらに、ApoE4の方がApoE3よりのCLSP 阻害活性が強いことを見いだした。後者の発見はapoE4が何故ADの危険因子なのかを説明する可能性がある。また、これら阻害因子の機能を阻害する因子Xをあらたに同定した。これらCLSP阻害因子群と阻害因子阻害因子Xの複雑な関係を現在解析中である。<前臨床試験>CLSP transgenic mice はAD model miceを交配するとAD model miceの認知症を抑制した。このメカニズムを病理解析で検討した。その結果、CLSP発現により、老人斑の低下、synaptic lossの改善が見られた.一方、Aβレベルは変化がなかった。これらの結果から、CLSPはAβとは無関係に、3量体ヒューマニン受容体を介して認知症を改善すると可能性が高いと結論された。また、CLSPをマウスに腹腔内投与すると、BBBを通過することを示した。<臨床試験>AD罹患者の脳組織を染色したところ、SH3BP5発現がやや低下している傾向が認められた。現在、この事実をNを増加させて確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前臨床試験におけるCLSP transgenic mice の解析は順調だったが、基礎研究/前臨床研究/臨床研究の全般にわたって、以下の理由で進捗がやや遅れた。
基礎研究において、新たなCLSP阻害因子としてApoE, calreticlinを発見した。また、阻害因子の機能を抑制する因子Xを発見した。これら一連の予想外の発見は、CLSP制御メカニズムが申請時に想定していたよりも遥かに複雑であることを意味する。結果、個々の分子の機能を明らかにする実験が必要となった。加えて、どの分子が最も重要なCLSP制御因子であるかを明らかにする実験が必要となった。同時に、ターゲット分子の範囲の広がりに伴って、臨床研究における、実験の範囲が拡大した。
一方、予定していたいくつかの研究はCLSP制御の中心的なメカニズム研究の結果が出るまで現在中断している。すなわち、CLSP阻害分子の遺伝子改変動物の作成は見合わせている。また、髄液内14-3-3sigmaのELISA測定はpendingとしている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な研究のスキームは変わらないが、検討すべき分子の数が増えている。その結果、二年目である平成28年度の研究は予定よりも時間がかかっているが、今後は着実に研究を進めれば、正しい答えに到達する可能性が高いと考えている。
今後、CLSPの機能を制御している中心分子あるいはメカニズムを同定する作業に集中する。その作業は培養細胞を用いた実験に加えて、アルツハイマー病罹患者の髄液内濃度測定を加味して行なう。同定された後、中心分子の髄液/血液内濃度を測定する。また、状況が許せばその分子による遺伝子改変動物作成を開始する。
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