AD防御因子HN/CLSPシグナルに関する基礎研究/前臨床研究として、CLSP 結合分子群の作用メカニズムを検討した。その結果、1)種々の阻害分子は系にCLSPと同等量あるいは5倍量を加えた段階から、阻害活性を示すこと、2)結合領域がHumanin-homologous domain 以外の場所であること、3)結合分子が複数存在して少なくともその一部は阻害分子ではない事、を発見した。また、 CLSP transgenic mouse/AD model miceはアミロイドベータレベルを低下させることなしに、海馬神経細胞のp-STAT3レベルを上昇させ、synaptic lossを抑制し、その結果AD model mice の記憶/認知障害を改善させることを見いだした。また、CLSP発現は前シナプスおよび後シナプスの重要な構成たんぱく質群のレベル低下を抑制することを見いだした。また、髄液内のCLSP濃度は3-6nMと活性を示すには十分の濃度であるが、髄液における種々のCLSP inhibitorsの総量がそれを上回ること可能性が高くなった。現在、さらなるCLSPの活性を調節する因子の基礎検討を続けている。最後に、AD病理標本を用いてHN/CLSP細胞内mediatorであるSH3BP5 の発現変化解析を行ない、ADではその発現が低下することを見いだした。この事実は、ADではCLSPシグナルが減弱する可能性を示唆している。
|