研究課題
エリスロポエチン(Epo)は赤血球造血に必須のサイトカインであるが、その受容体の発現が多くの臓器で検出されることから、心血管系や神経系などでも機能することが示唆されている。Epoは既に貧血治療薬として用いられているため、様々な疾患への適用外使用の有効性が検討されているものの、個体レベルの解析系が乏しく、研究が進んでいない。そこで、様々なEpo関連の遺伝子改変マウスを活用し、Epoの造血外機能とその意義を明らかにする。特に、Epoの低酸素誘導的産生機構と細胞保護機能に着目し、低酸素ストレスに対する生体防御機構における造血因子Epoの多様な機能を解明する。初年度は、エリスロポエチン産生能が著しく低下した貧血マウスを解析し、骨形成の低下を発見した。この現象は、マウスにエリスロポエチン製剤を投与することにより改善されたことから、エリスロポエチンまたは造血のシグナルが骨形成に影響を及ぼすことが考えられた。また、エリスロポエチンを貧血マウスに投与し、4時間後の赤芽球における遺伝子発現を網羅的に明らかにした。現在、エリスロポエチンシグナルによって発現誘導される遺伝子制御機構の解析を進めている。さらに、エリスロポエチン産生細胞を腎臓および胎仔脳から単離し、培養する解析系の確立を行った。腎臓のエリスロポエチン産生細胞についてはRNAシークエンス解析を行い、その遺伝子発現様式の全貌を明らかにし、性状について理解を深めることができた。
2: おおむね順調に進展している
エリスロポエチン産生能が著しく低下した貧血マウスを解析し、骨形成の低下を発見した。この現象は、マウスにエリスロポエチン製剤を投与することにより改善されたことから、エリスロポエチンまたは造血のシグナルが骨形成に影響を及ぼすことが考えられた。また、低酸素誘導性転写因子HIF2aを過剰発現するマウスの作出に成功し、エリスロポエチン産生量が増大していることを確認できたため。
低酸素誘導性転写因子HIF2aを過剰発現するマウスの解析とエリスロポエチン産生不全による貧血マウスの解析を通して、骨形成および神経細胞保護におけるエリスロポエチンの役割を検討する。また、エリスロポエチン産生細胞の単離解析を進める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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