研究課題
赤血球増殖因子エリスロポエチンは成体では腎臓で産生されるが、胎児期には肝臓および神経系の細胞でつくられる。神経系のエリスロポエチン産生細胞は、神経上皮細胞と神経底細胞で構成されており、胎児期に一過性にエリスロポエチンを産生する。これまでに、神経系のエリスロポエチン産生が胎児の赤血球造血に必要でることがわかっているが、個体発生への関与は不明である。また、神経系エリスロポエチン産生細胞が個体発生に伴ってどのような細胞に分化するかはわかっていない。今年度の研究では、主に神経系エリスロポエチン産生細胞の性状解析にとりくんだ。まず、エリスロポエチン産生細胞で蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変マウス胎仔から神経系エリスロポエチン産生細胞を単離し、培養した。その結果、増殖能の高い細胞株を得ることができた。得られた細胞株の遺伝子発現を解析したところ、様々な神経系マーカーを発現していたが、胎仔の神経系エリスロポエチン産生細胞の遺伝子発現様式とは異なる点も多く見つかった。この結果は、神経系エリスロポエチン産生細胞は多種多様な細胞種で構成されていることを示しており、現在、論文査読中である。成体では、エリスロポエチン産生は低酸素刺激によって誘導され、赤血球造血を促すが、造血以外に、貧血や虚血から神経細胞や血管内皮細胞などの様々な細胞を保護する効果があることが示唆されている。そこで、神経系エリスロポエチン産生細胞における低酸素誘導性のエリスロポエチン産生について解析を行なったが、エリスロポエチン産生誘導は観察されなかった。胎児期の神経系エリスロポエチン産生細胞は低酸素刺激ではなく、個体発生のシグナルによって一過性にエリスロポエチンを産生することが考えられた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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