研究課題
ゲノムDNAが収納されている核では、エピゲノム制御やDNAの複製・修復に伴い、活発な酸化還元反応が起こっていることが明らかになってきた。しかし、核内のレドックスバランスの制御機構とその破綻がもたらす病態には不明な点が多い。そこで、本研究では、酸化ストレス応答が障害され、核で発生する内因性親電子物質として代表的なホルムアルデヒドが蓄積しているAdh3:Nrf2二重欠損状態をモデル系として採用し、内因性親電子性物質がもたらすゲノムへの影響genotoxicityとエピゲノムへの影響epigenotoxicityを明らかにすることを目的としている。また、NRF2遺伝子やADH3遺伝子の機能低下をもたらすSNPと疾患感受性との関係を、核内レドックスバランスの破綻という視点から解明することを目的としている。本年は、タンパク質のシステイン残基のパースルフィド状態の検出とその機能的意義の検証を行った。なかでも、ADH3は多くのシステイン残基を有しており、しかもそれが高度にポリサルファー化されていることが明らかになった。1つのシステイン残基C174をセリンに置換した変異体C174SはADH3が有するGSNOリダクターゼ活性が激減し、かつ、タンパク質全体のポリサルファー化が激減することが明らかになった。このことから、ADH3の酵素活性には、システイン側鎖のポリサルファー化が必要であることがわかった。また、本年は、Fancd2ノックアウトマウスの作成、条件付きFancd2ノックアウトマウスの作成が完了した。
2: おおむね順調に進展している
本年は、タンパク質のシステイン残基のパースルフィド状態の検出とその機能的意義の検証を行った。なかでも、ADH3は多くのシステイン残基を有しており、しかもそれが高度にポリサルファー化されていることが明らかになった。1つのシステイン残基C174をセリンに置換した変異体C174SはADH3が有するGSNOリダクターゼ活性が激減し、かつ、タンパク質全体のポリサルファー化が激減することが明らかになった。このことから、ADH3の酵素活性には、システイン側鎖のポリサルファー化が必要であることがわかった。また、本年は、Fancd2ノックアウトマウスの作成、条件付きFancd2ノックアウトマウスの作成が完了した。
今後、ADH3活性が核内のレドックス環境維持に果たす役割を、Fancd2欠損状態とのAdh3欠損状態との組み合わせにより明らかにする。また、Nrf2とFancd2の2重欠損状態がもたらす影響についても明らかにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (40件) (うち国際学会 6件、 招待講演 10件) 備考 (2件)
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