研究課題
ゲノムDNAが収納されている核では、エピゲノム制御やDNAの複製・修復に伴い、活発な酸化還元反応が起こっていることが明らかになってきた。しかし、核内のレドックスバランスの制御機構とその破綻がもたらす病態には不明な点が多い。そこで、本研究では、核で発生する内因性親電子物質として代表的なホルムアルデヒドの解毒に重要なADH5(以前はADH3と呼ばれていた)の欠損状態がもたらす核内レドックス反応の撹乱を、DNA損傷を指標に評価し、エピゲノム代謝回転と細胞の増殖や老化の関係を明らかにすることを目指している。本年は、Fancd2ノックアウトマウスとAdh5ノックアウトマウスの交配をすすめ、2重欠失マウスのほとんどが胎生致死であることを見いだした。そこで、誘導的にFancd2を欠失させるために、Fancd2F/F::Ubc-CreERT2::Adh5-/-マウスの作成を進めた。また、GSNOR活性のみうしなっているADH5 C174Sをノックインしたマウスを作成し、病態モデルマウスとの交配をすすめた。ADH5の酵素活性において、C174がADH5のポリサルファ修飾をになう重要なシステイン残基であること、また、C174S変異体は、ポリサルファ修飾のレベルが激減し、GSNOR活性をほぼ消失すること、一方で、FDH活性は維持しているころから、GSNOR活性にはADH5のポリサルファ化修飾が重要であることが示唆された。さらに、ポリサルファーの主たる産生酵素としてCars2を同定し、その遺伝子ノックアウトマウスをCRISPR-Cas9法により作成し、生体におけるポリサルファ産生機能を確認した。
2: おおむね順調に進展している
本年は、マウスの作成を中心にすすめた。Fancd2::Adh5二重欠損マウスが胎生致死となることが確認できたことから、胎生期においてはエピゲノム代謝が活発なため、内因性ホルムアルデヒド産生量が多くなり、それによってもたらされるDNA損傷が修復されないことが致死をまねくものと予想される。本年、Fancd2F/F::Ubc-CreERT2::Adh5-/-マウスの作成も進め、近いうちに完成する予定である。当該マウスを用いて胎児期、若年期、老年期、それぞれに誘導的にFancd2を欠損させた場合のDNA損傷の程度を検討し、内因性ホルムアルデヒド代謝との関係、エピゲノム代謝との関係を明らかにする。
今後は、Fancd2F/F::Ubc-CreERT2::Adh5-/-マウスに対してタモキシフェンを投与することで、誘導的にFancd2:Adh52重欠損状態を作成し、障害がおこる細胞系列を確認する。また、老齢マウスと若年マウスにおける障害の違いを調べ、内因性ホルムアルデヒドの産生レベルの違いとエピゲノム制御の活性との相関を検討する。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (37件) (うち国際学会 11件、 招待講演 17件) 備考 (2件)
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