研究課題
本研究では、複数のイノシトールリン脂質代謝酵素をミエロイド系細胞特異的に欠損したマウス(cDKOマウス)を用いて、脂質代謝の異常と病態との関連を解明することを目的としている。我々が作製したcDKO雌マウスは卵巣が顕著に肥大し、性索間質性腫瘍に似た病態を呈する。本年度はまず、卵巣における主なミエロイド系細胞であるマクロファージの機能について解析を進めた。cDKOマクロファージは野生型と比較し、リポポリサッカライドに対する応答や貪食能に異常をきたすこと、さらに生殖器に異常の認められないcDKO雄マウスでは、移植がん細胞の増殖が亢進する傾向にあった。これらの結果から、cDKOマクロファージの機能異常が卵巣肥大に関与する可能性が示唆された。この点をさらに明確にするために、cDKOマウス作製に使用したCreマウスにおける、Creリコンビナーゼ発現細胞の特定を行った。既報通りであれば、ミエロイド系細胞限定的にCreリコンビナーゼを発現する。抗Cre抗体やレポーターマウスを用いた解析の結果、ミエロイド系細胞におけるCreリコンビナーゼの発現が確認された。さらに卵巣においては、非常に低頻度ではあるが、ミエロイド系細胞以外のCreリコンビナーゼ発現細胞が存在することを見出した。今後は、これらのCreリコンビナーゼ発現細胞のうち、どの細胞が卵巣肥大の原因となり得るのかという点について解析を進める必要があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、cDKOマクロファージの機能解析が進んでいる。さらにその過程で新たなCreリコンビナーゼ発現細胞を見出すことができた。
異なるCreリコンビナーゼトランスジェニックマウスを用いて表現型が再現されるか否か、あるいは、骨髄移植や卵巣移植による表現型の変化について解析を行う。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Cancer Discov.
巻: 5 ページ: 730-739
10.1158/2159-8290.
巻: 5 ページ: 740-751
10.1371/journal.pone.0142091.
PLoS One
巻: 4 ページ: e0142091
Oncotarget
巻: 6 ページ: 10548-10562
10.18632/oncotarget.3307