研究課題
本研究では、複数のイノシトールリン脂質代謝酵素をミエロイド系細胞特異的に欠損したマウス(cDKOマウス)を用いて、脂質代謝の異常と病態との関連を解明することを目的としている。我々が作製したcDKO雌マウスは卵巣が顕著に肥大し、性索間質性腫瘍に似た病態を呈する。本年度はcDKOマウスにおける病態解析を行った。1か月齢のcDKO卵巣には一次卵胞や二次卵胞が認められるものの、その後徐々に正常な卵胞は消失し、3~4か月齢以降からKi67 陽性細胞が出現した。1および3か月齢マウスを用いて血中の性腺刺激ホルモンレベルを測定したところ、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンともにコントロールマウスとcDKOマウスでは差が認められなかったため、cDKO卵胞の発達異常は性腺刺激ホルモンの分泌異常に起因しないと考えられた。Ki67 陽性細胞の周囲には、F4/80陽性のマクロファージが多数存在し、卵巣肥大にマクロファージの関与が推察された。本年度はさらに、ミエロイド系細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現する別種のトランスジェニックマウスを用いて同様に複数のイノシトールリン脂質代謝酵素欠損マウスを作製した。その結果、この雌マウスにおいては卵巣肥大を生じることはなかった。次に卵巣肥大に対する骨髄細胞の関与を解明するために、骨髄キメラマウスを作製したが、X線照射や薬剤処理により正常な卵子や卵胞が消失してしまうため判定できなかった。そこで生後2~4日の卵巣を成体マウスへ移植したところ、コントロールマウスの卵巣をcDKOマウスに移植しても卵巣は正常に発達しなかったが、cDKOマウスの卵巣をコントロールマウスに移植した場合は肥大が認められた。これらの結果から、成体の骨髄由来のミエロイド系細胞ではなく、生後2~4日に既に卵巣に存在する細胞が卵巣肥大に関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画通り、cDKO雌マウスの病態解析が進み、卵巣肥大に関与する細胞を特定しつつある。
cDKO卵巣におけるPIPs動態解析と、卵巣肥大のメカニズムの解明を行う。
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