研究実績の概要 |
本研究で我々は、「直鎖状ユビキチン産生酵素(LUBAC)の相互作用因子探索と生理機能解析」として、LUBACユビキチンリガーゼ本体やこの酵素が特異的に産生する直鎖状ユビキチン鎖に相互作用する因子の生理機能解析を目指した。今年度の研究成果として我々は、まず直鎖状ユビキチン結合性UBANドメインを含有するoptineurin(OPTN)と直鎖状ユビキチンとの共結晶構造をX線解析によって解明し、OPTN-UBANが二量体を形成し、その両側に直鎖状ユビキチンが1分子ずつ結合していることを明らかにした。本研究で我々は、OPTNの直鎖状ユビキチン認識に重要なアミノ酸変異は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症のみならず、炎症や免疫制御に重要なNF-κB活性の抑制に関わることを明らかにした。さらに、OPTN欠損によってアポトーシスが亢進することから、OPTNが細胞死制御に関わることを明らかにした(Nakazawa et al., Nat. Commun., 2016)。また、我々は、LUBAC活性がウイルス発癌を制御し、直鎖状とK63型の混成ユビキチン鎖を生成することを見出した (Shibata Y. et al., PLoS Pathog., 2017)。そして最近我々は、LUBACサブユニットのうちHOIPがアポトーシスとともにカスパーゼによって特異的に切断され、基質タンパク質の直鎖状ユビキチン化状態が変化することを明らかにした(Goto E. & Tokunaga F., BBRC, 2017)。一方、細胞内で外来DNAのセンサーとして機能するDDX41について構造とインターフェロン産生能の相関も明らかにした(Omura H. et al., Sci. Rep., 2016)。このように我々はLUBACの機能制御に関わる細胞応答と病態への関与について広範で精力的な研究を推進している。
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