研究実績の概要 |
ヒストンメチル化の一種であるH3K36me3の網膜発生における役割について解析を行った。H3K36me3の脱メチル化を行う酵素の網膜特異的ノックアウトマウスはすでに作成し、このマウスが網膜発生中に視細胞分化に異常があることを明らかにしていた。このマウスについてさらに免疫染色を追加して視細胞の分化が特異的に障害されているというフェノタイプを確定した。その上で、メチル化の異常により遺伝子発現の異常が観察されるのかどうかについて、このマウスの網膜を用いて網膜特異的遺伝子について発現パターンをqPCRでコントロールと比較した。視細胞関連の複数の遺伝子について発現パターン異常が観察された。このため、これらの遺伝子の遺伝子座においてH3K36me2, H3K36me3の修飾の異常が観察されるかどうかChIP-qPCRで検討してみたところ、多数の遺伝子座で、H3K36me2, H3K36me3両者のメチル化レベルの大きな変動が観察された。より網羅的に検討する必要性が出たため、H3K36me2, H3K36me3の抗体を用いてChIP-seqを行った。同時に当該酵素の抗体によるChIP-seqを行い、酵素が結合する可能性があり、かつH3K36me2あるいはH3K27me3レベルの変動がある遺伝子座についてバイオインフォマティクスにより抜き出した。これらを総合し、この酵素の網膜発生における役割とその分子基盤について論文としてまとめることが可能になるレベルまで到達した。
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