研究課題
本研究の最後の年度となるので、結論に迫る実験を遂行するように努めた。まず、スフィンゴ糖脂質によるシグナル制御機能の解明において重要な、糖脂質の発現と、その膜上での膜分子との会合による協働作用の解析を試みた。そのために、メラノーマ、グリオーマ、小細胞肺癌の細胞株を用いて糖脂質のリモデリングを行い、各々の形質変化と細胞シグナルを解析した。さらに、スフィンゴ糖脂質のシグナル制御機構を明らかにするために、糖脂質と相互作用する膜分子の同定を目指して、EMARS/MS解析を行い、メラノーマではネオジェニンを、マウスグリオーマではPDGF受容体alpha を、小細胞肺癌ではASCT-2を同定した。これらの膜分子は、標的のガングリオシドと特異的に結合することを、免疫共沈降とTLC免疫染色により示した。また、各々の受容体またはアミノ酸トランスポーター機能の発現により、各癌細胞の悪性形質の発現に関与することが示された。一方、スフィンゴ糖脂質のシグナル制御機能の解明において、その脂質部位を含めた分子全体の化学構造の解析が不可避と考えられ、質量分析による脂質部位の構造解析を進めた。この点で非常に有用だったのが、GD3を発現させた大腸癌細胞株DLD-1である。この細胞はシアル酸を認識するシグレック7に認識されなかったが、CRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウトによって、長鎖塩基に結合するC4位の水酸基を除去すると、シグレックの結合が認められた。また、Des2遺伝子ノックアウトに加えて、脂肪酸の2C部位に水酸基を転移するFA2H遺伝子も、同様にノックアウトし、最終的に単独遺伝子ノックアウトと両者のダブルノックアウト株を樹立し、シグレック7の結合性が脂質部位の水酸基の数によって阻害されることが明らかになった。現在、NK様細胞と癌細胞の相互作用によるシグナル変化を解析し、興味深い結果を得ている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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