研究課題
Dyneinモーター蛋白質は様々なCargo(積み荷)を輸送することで、多様な細胞機能(シグナル応答や細胞恒常性維持、細胞分裂制御など)に機能している。このシステムの破綻は神経変性疾患など、重篤な疾患を引き起こすことが知られている。最近申請者は、ROCOファミリーキナーゼLRRK1がDyneinと複合体を形成し、上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞内輸送を制御することを明らかにした。LRRK1は1分子内にRas様GTPaseドメインとMAPKKK様キナーゼドメインをもつユニークな蛋白質である。LRRK1のファミリー分子LRRK2が、家族性パーキンソン病原因遺伝子Park8であることから、臨床的にも注目を集めている。しかしこれまで、LRRK1及びLRRK2の機能や生理的役割はあまり明らかになっていない。本課題では、LRRK1-Dyneinによる細胞機能の解明を、EGFR細胞内トラフィック制御及びオートファゴソーム輸送・成熟制御に焦点を当て研究を行った。昨年度までの研究から、EGFR細胞内トラフィック制御においてLRRK1は、(1)微小管プラス端結合因子CLIP170をリン酸化すること、(2)リン酸化されたCLIP170はDynein/Dynactin複合体との結合が促進され、これら複合体を微小管プラス端に局在させること、(3)CLIP170がリン酸か依存的にEGFRの細胞内輸送に機能することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
これまで我々はLRRK1がキナーゼ活性依存的にEGFRの細胞内トラフィックを制御していることを明らかにしてきた。しかし、このプロセスにおけるLRRK1の基質については不明であった。今回我々はLRRK1の基質として、微小管プラス端結合因子CLIP170を同定し、EGFR細胞内トラフィックにおけるLRRK1によるCLIP170のリン酸化の役割を解明できた。また本成果はJournal of Cell Science誌に発表済みである。
今後は以下の点に焦点を絞り解析を行っていく予定である。(1)LRRK1-Dyneinによるオートファゴソーム成熟機構の解明我々はLRRK1がキナーゼ活性依存的にオートファゴソームの成熟に機能していることを明らかにしてきた。今後はその分子メカニズムについて解明していきたい。(2)LRRK1-Dyneinによる中心体成熟の解析LRRK1はM期中心体で活性化し成熟に機能していることを見出している。そこで、LRRK1-Dyneinがどのように中心体成熟に機能しているのか検討していく予定である。
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J. Cell Sci.
巻: 128 ページ: 385-396
10.1242/jcs.161547.