研究課題/領域番号 |
15H04698
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
山崎 大樹 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 主任研究官 (40467428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TRICチャネル / コンディショナル / カウンターイオンチャネル / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
当該年度の研究実績として、①コンディショナルTric-b欠損マウスの作製と②Tric-b欠損ES細胞の作製について記載する。全身性のTric-b欠損マウスは、肺胞形成不全により出産直後に呼吸困難を引き起こし新生致死となってしまう。成獣マウスにて、TRIC-Bの機能を解析するためには、コンディショナルノックアウトマウスの作製が必要不可欠であることから、本実験計画を提案するに至った。 ①コンディショナルTric-b欠損マウスの作製では、コンディショナルポテンシャルを有するES細胞がEuMMCR(European Mouse Mutant Cell Repository)にて作製されており、そこよりES細胞を購入し、キメラマウスの作製を公益財団法人実験動物中央研究所へ委託した。3月末の段階でキメラマウスが複数個体得られており、順調に成育している。 ②Tric-b欠損ES細胞の作製は、キメラマウス作製がうまくいかないことも考慮し、Tric-b欠損ES細胞を心筋や神経細胞等に分化させin vitroで実験を行うことも計画していた。 こちらは株式会社トランスジェニックへの委託であるが、CRISPR/Cas9によるTric-b遺伝子の欠損ベクターを作製し、それをES細胞に導入後、クローニング作業を行った。現在は、最終クローニング工程に進んでいる。 上記2つに項目のいずれかにて、心筋細胞あるいは神経細胞などを用いてTRIC-Bを標的とした医薬品を探索する。最終的に、TRIC-Bの医薬品による副作用発現への関与等を明らかにすることができれば、副作用の軽減やさらにはTRIC-Bを標的とした医薬品の創出に貢献することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者が、平成27年1月に現在の所属先に異動した関係上、本研究費の交付決定後に遺伝子組換え実験や動物実験計画書等の申請を新規に行う必要性があった。また、コンディショナルポテンシャルを有するES細胞の購入についても、購入方法に関して仲介業者を介するか介さなかの問題が生じ、そこで遅れが生じてしまった。Tric-b欠損ES細胞の作製では、当初NextGEN-CRISPRという新規ゲノム編集ツールを用いて作製を試みたが、うまくポジティブクローンが得られなかったため、CRISPR-Cas9ベクターの作製の最初の段階から委託をお願いし、作業を進めたため平成27年度中にTric-b欠損ES細胞の作製完了を予定していたが、やや遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、①コンディショナルTric-b欠損マウスの作製は、キメラマウスを繁殖させてコンディショナルポテンシャルの確認を行うべく全身でCreを発現させるCAG-Creマウスとの交配を予定している。CAG-Creマウスとの交配により全身でTric-b遺伝子が欠損するため、肺におけるTric-bも欠損することになり、全身性Tric-b欠損マウスの表現型である肺胞形成不全による新生致死が観察されることが推測される。次いで、心筋特異的Myh6-Creマウスとの交配により、心筋特異的Tric-b欠損マウスの作製を目指す。 ②Tric-b欠損ES細胞の作製では、Tric-b欠損ES細胞の作製が完了次第、心筋細胞および神経細胞への分化誘導プロトコルの確立を目指す。分化誘導の過程で、Tric-bが関与しそうな現象があれば、随時深く追求し、論文としてまとめる予定である。分化誘導プロトコルの確立と並行して、評価系の構築を行う。心筋ではカルシウムイメージング、神経細胞では多点電極システムを用いたスパイク測定などを計画している。
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