研究課題
腫瘍発症に関連する多くの遺伝子領域で、RNAポリメラーゼII(以下Pol II)が転写開始直後に一時停止しており、その一時停止が転写伸長因子によって解除され、遺伝子が過剰に転写されることが、腫瘍発症の引き金となることがわかってきた。Pol IIが一時停止を解除されるためには、転写伸長因子が遺伝子領域にリクルートされることが必要である。われわれはメディエーター転写複合体のサブユニットMed26が、2つの異なる転写伸長因子複合体Super elongation complex(SEC)やLittle elongation complex(LEC)を腫瘍関連遺伝子領域にリクルートし、それらの遺伝子の転写を促進することを明らかにした【Takahashi H, et al. Nature communications 2015】。SECは混合型急性白血病(MLL)の発症に深く関与している。また、Med26はLECと共役してsmall nuclear RNA(snRNA)などのnon-coding RNAの転写を制御することがわかった。snRNAもがんの発症や進展に関与することが知られていることから、Med26は混合型急性白血病やがんの発症メカニズムに関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の遂行によって、メディエーター転写複合体が、2つの異なる転写伸長因子複合体SECとLECをそれぞれ異なる腫瘍関連遺伝子領域にリクルートすることによって、遺伝子の転写伸長を制御することがわかった【Takahashi H, et al. Nature communications 2015】。
Med26がどのような遺伝子領域にSECやLECをリクルートし、Pol IIポージング解除の役割を果たすのかについて、ChIP-seqやRNA-seq解析によって網羅的に明らかにする。また、混合型急性白血病細胞において、Med26をノックダウンした場合に、その白血病化能や白血病関連遺伝子の発現が減少するのかについて明らかにする。さらに、Med26のさまざまな臓器での機能を明らかにするために、コンディショナルノックアウトマウスの作製を行なう。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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