研究課題/領域番号 |
15H04702
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西野 武士 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (40094312)
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研究分担者 |
田之倉 優 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (60136786)
岡本 研 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60267143)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 高尿酸血症治療薬 / キサンチン酸化還元酵素 |
研究実績の概要 |
①ALSモデルマウスを用い、febuxostat(Feb)による効果の再現性とともに、purine salvage増加効果をより明瞭に解析するため、Feb+基質前駆体の薬効評価を実施した。生存日数の比較より Feb群は長寿の傾向が確認された。②マウスにおけるFeb投与時の末梢血中 基質、尿酸の濃度変動をHPLCにより定量した。Febを腹腔内注射し、経時的変動を観察した。血漿尿酸値はFeb投与後30分ですでに検出限界以下となり、代わりに基質(Hx、X)がそれぞれ顕著に上昇した。基質濃度の上昇は4時間後まで高濃度が持続した。尿酸値は4時間後まで低濃度を維持していた。Febの効果は16時間後には低下し、そそれ以後は尿酸値上昇し、Hx、X濃度は低下した。効果が高い投与後2時間での血中のHx、X、尿酸の総量は減少しており、XOR阻害により蓄積したHx、Xがsalvageされ、プリンヌクレオチドに変化したことが推測された。③Feb投与が他の代謝経路に与える影響を検証するため、マウス脳組織のメタボローム解析を行った。マウス脳組織はサンプル調整中のATPの消費変化を測定した。メタボローム解析はFeb投与群において脳組織アデニンヌクレオチドの総量の増加を認めており、組織中に蓄積したHxがサルベージされATPへと再利用されていることが確認された。④活性酸素説を可否を検証するため既に作成してあるスーパーオキシド過剰産生変異XORマウスについてDNAアレイ解析、in situ hybridization解析、RT-PCRを行い、スーパーオキシドによる遺伝子変動を網羅的に解析した。アポトーシス関連を中心に多くの遺伝子の変動を認めた。⑤さらにin vitro実験として、阻害剤の作用をさらに明確にするためMD計算、活性酸素生成機構、NADとFADの反応機構を他のフラビン酵素とも比較してさらに詳細に解明した。以上のことからFebの作用は2つの機構の総合的なものである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①ALS動物実験の研究については順調に進められた。 ②薬剤効果の機構解析では実験をin vitro の細胞系実験に加え、より望ましいマウス脳の抽出系のメタボローム実験系を加えた。当初計画したアイソトープによるIMPへの取り込み実験ではIMPが様々なヌクレオチドへ変換されるからである。そのため進行はやや時間を消費したが、予期した以上の興味ある結果が系統的に得られている。一方培養細胞系の実験は予算不足の関係でやや遅れている。なお、活性酸素生成モデル系での研究を、裏をとる目的で行ったが、予想に反して大きな意味があることが推定された。すなわち、進行遅延効果は複数の要因である可能性が考えられた。 ③酵素の阻害機構についてより詳細な結果が得られ、阻害剤の作成方法に重要な示唆が得られた。 ④FADとNAD、酸素との反応調節機構に重要な解析結果が得られた。以上の結果は初年度のため学会発表が主であり、論文発表成果は次年度以降となる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には申請時に予定した計画通り実験研究を進める。さらにメタボローム解析に加え動物実験の人手が必要であり、そのため予算の関係でやや遅れている培養細胞系の実験をより簡素な実験系にして補いたい。また詳細な薬物の分子作用機構を解明させる。
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