研究実績の概要 |
特発性過眠症は長時間にわたる睡眠エピソードが出現し、日中に強い眠気を感じ、総睡眠時間が11時間以上となる特に重症な中枢性過眠症である。特発性過眠症の感受性遺伝子の同定を目的として、ゲノムワイド関連解析(GWAS)、第1次及び第2次の再現性研究(特発性過眠症患者約400例、コントロール約4,000例)を実施した。その結果、ゲノムワイドな有意水準に到達する一塩基多型(SNP)は確認できなかった。現在も特発性過眠症患者のDNAサンプル収集は継続しており、今後そのサンプルを用いた再現性研究を実施し、統計学的に確かな感受性遺伝子の同定を目指す。また特発性過眠症と関連するレア変異も探索しており、そちらも3つの候補レア変異を抽出し、関連解析を実施中である。 ナルコレプシーのGWASに関しては、世界中のナルコレプシー研究者と国際コンソーシアムを構築し、メタGWASを実施している(ナルコレプシー患者約5,300例、コントロール約20,000例)。統計解析の結果、12の疾患感受性領域の同定に成功した。以前より我々が着目していたCCR1/3遺伝子領域に関しては、ゲノムワイドな有意水準に到達しなかったが、rs1979671がP値4.37E-07を示した。このrs1979671に関しては、新たなナルコレプシー患者のDNAサンプルを用いて再現性研究を実施する必要がある。また興味深い結果として、ナルコレプシーのGWASデータを用いてLD Score Regression解析を実施した所、自己免疫疾患との遺伝的な相関を示すだけでなく、鬱症状や神経症的傾向とも有意な相関が確認された。このことは鬱等の研究結果が、ナルコレプシーの病態解明の重要な手がかりになることを示唆するものである。
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